世界でEV販売が苦戦し始めたテスラと同社の技術で国内を底上げしたい中国政府とに思惑一致の余地。

米テスラの自動運転機能「FSD(Full Self︱Driving)」が2月末、中国でスタートした。しかし、法令や交通事情がアメリカと異なるため、トラブルが続発。
機能の改善には中国での本格的なデータ収集と学習が不可欠だが、政治的事情からそれにはアメリカとの切り離しが条件になる。欧米での販売不振が広がる中、中国市場で販売を伸ばすには大幅に「中国化」する以外に道はないとの見方が強まっている。
中国で問題頻発のテスラ「自動運転」
FSDという名称は「完全自動運転」の英語の頭文字を取ったものだが、現時点では自動運転ではなく、自動運転のロードマップで「レベル2」相当の運転支援である。
テスラは人間の脳に似た自律的判断が可能な独自のAIを開発。地図データやレーダーなどに頼らず、高精度カメラの映像を基にAIが状況を瞬時に判断して運転する。現時点では世界最高水準の技術と目される。テスラ自身の発表によれば、装着車の距離当たり事故率は32%減少したという。
中国ではFSDの供用開始直後から各地で問題が頻発し、SNS上には事態を訴える投稿動画があふれた。例えば、自転車専用レーンを認識せず誤進入する、信号機の位置や形状がアメリカと異なるため見落とす、無秩序に走り回る無数の電動バイクや自転車の認識が追いつかない──。
中国では膨大な数の監視カメラによって交通違反を自動的に摘発し、反則点数と罰金を科すシステムが普及している。そのため「1日で免許停止になった」という泣くに泣けない声も上がった。
こうした状況が発生したのは、FSDが基本的にアメリカでの走行データの蓄積と学習を基に動作しているからだ。「国家安全」を重視する米中双方の政治的事情から、「アメリカ育ち」のFSDは中国でトレーニングできず、逆に中国国内で蓄積したデータはアメリカに持ち出せない。この板挟み状態がテスラ最大のジレンマである。
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