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〈インタビュー〉トプコン社長「アクティビストを追い出すためにMBOを決めたわけではない」

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トプコン本社
1932年に測量機の国産化を目指して設立されたトプコン。創業来の測量技術は建機を自動制御するICT自動化施工などで応用されている。近年は業績が低迷していた(記者撮影)
東証プライム上場企業で眼科検査装置や測量・計測機器を手がけるトプコンは3月28日、MBO(経営陣による買収)によって株式を非公開化すると発表した。アメリカの投資ファンドのKKRと政府系ファンドのJIC(産業革新投資機構)が参画し、今年7月末にも1株3300円でTOB(株式公開買い付け)を行う。
トプコンはかねて、複数のアクティビスト(モノ言う株主)に株付けされていた。バリューアクトは約14%、オアシス・マネジメントは約10%を保有する。非公開化に至る経緯や成長戦略、アクティビストの存在が今回の判断に与えた影響について、江藤隆志社長に聞いた。

――なぜMBOを決断したのでしょうか。

今の株式市場では短期的なリターンを求められる。長期的な戦略とは両立できないのが課題だった。

われわれの事業はアイケア(眼科検査装置)とポジショニング(測量・計測機器)の2つ。

アイケアは先行投資を続けた結果、2024年度からそこそこ花開き始めているとはいえ、まだ投資が必要だ。ポジショニングは長年トプコンを引っ張ってきた事業だが、この2年ほどは市況が悪化しており、新たな戦略が求められている。

いくつかのファンドから提案を受ける中で、理念に共感するパートナーを選んだ。MBOを選択するのは、私が(非公開化後も株主として残りつつ)社長として経営をリードし、社員に安心感を与えるためだ。

官民の2ファンドがスポンサーに

――スポンサーとして、KKRとJICを選定した理由は。

当初はKKRのほか、欧州と日本のファンドの計3社が候補に挙がっていた。KKRに決めたのは、投資経験が豊富で、(トプコンが進出している)アメリカ市場に強みがあるからだ。現地でのアイケア事業の販売チャネル拡大も期待できる。当社のこともよく研究されているとの印象を受けた。

トプコン江藤社長
江藤隆志(えとう・たかし)/1960年生まれ。1990年トプコン入社。2015年取締役、2023年より社長CEO(画像:トプコンHPより)

パートナーにはJICも選定した。(官民連携のMBOは)ほとんど例がないのではないか。

JICは日本最大のファンドであるうえ、日本政府がバックアップしている。また、当社の宇宙・防衛事業は外為法上のコア業種の指定を受けており、経済安全保障のパートナーにもなれる。

――2023年にバリューアクト、2024年にオアシスがトプコン株を取得しています。アクティビストの存在は、MBOの意思決定に影響を与えましたか。

まったくなかったと言えばウソになる。投資家との対話を継続する中で示唆はいただいており、その中で投資ファンドとの会話も出てきた。バリューアクトからは、会社経営について複数回アドバイスもいただいた。ただ、アクティビストを追い出すためにMBOを決めたわけではない。

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