「何か建つとは思っていたが…」 都内住宅街に”巨大データセンター”計画で広がる困惑、急拡大で相次ぐ各地の軋轢

「マンションか何かの建物が建つとは思っていたが、まさかデータセンター(DC)だとは思わなかった」
東京駅から東に約5キロ、江戸時代の埋め立てで生まれた水運都市に起源を持つ東京都江東区の千石。今も残るいくつもの河川に囲まれた下町に、数多くの集合住宅が立地する。その一角で浮上した大規模なDC整備計画をめぐり、摩擦が起きている。
DCの建設予定地は、計9500平方メートルに上る広大な土地だ。現在は主に大型の駐車場として使われている。約600戸を擁する高層マンションが隣接し、住民から住環境への悪影響を懸念する声が上がっているのだ。
建設予定地を真下に望むマンションの一室に居住し、住民らでつくる「江東区千石のデータセンター建設を考える会」の事務局を務める男性(39)は、冒頭のように振り返る。
事業主は日本初進出のシンガポール企業
企業などがシステムを利用するのに必要なサーバーや、ICT設備を収納するITインフラ基盤であるDC。クラウドの普及や生成AI(人工知能)の登場に伴い、東京、大阪圏内を中心に建設ラッシュが起きている。
2024年には、AWSやマイクロソフト、オラクルといった外資クラウド大手が計4兆円規模に上る巨額の対日インフラ投資を表明し、彼らをDCの利用者として期待する外資系の投資ファンドを軸に、巨額の投資資金が流れ込む。足元では、数百億~数千億円規模のDC建設計画が毎月のように明らかになっている。

マンションの住民などによると、千石のDCの整備を予定する事業主は、シンガポールのエンピリオン・デジタルとJA三井リース建物(東京)だ。
エンピリオンは、アジアの大手インフラファンドであるセラヤ・パートナーズ傘下のDC事業者で、2021年に設立された。シンガポールでDCを運営した経験を持つが、日本への進出は今回が初めてだという。海外のクラウド大手が主導する活発な対日インフラ投資の波に乗ろうとする動きとみられる。
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