(第9回)新卒技術職・研究職の深刻な「採用」氷河期の到来

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 実際の理系人材の需要と供給のギャップは次のプロセスで解消されると考えられる

1)理系人材に対する需要量が供給量を超過
2)理系人材の採用コストが急騰
3)理系人材の確保の方法が多様化
  a)大学研究室との結びつきの強化
  b)理系学生が集まるイベント等への出席
  c)理系人材専門の新卒人材紹介を利用
  d)海外の理系人材の採用が活発化
4)技術職・研究職、一人一人の力を最大限発揮する環境構築
5)理系人材を「スター」として遇し、表現する企業の増加
6)理系を選択する学生の増加
7)需要と供給のギャップが解消

 理系人材の採用コストが急騰することにより、採用の多様化がおきている。今はそのような状況だ。
 現在は a)や b)の取り組みを強化している企業が大半だろうが、 c)に取り組み始めた企業もたくさんある。実際に、忙しすぎて就職活動ができず、就職に苦労している理系学生も数多くいる。彼らは限られた時間で効率的に自分に合う会社を見つけたいがために、新卒採用の支援、就職活動の支援をしている企業に相談に行く。やはり、そのときに優先的に学生に紹介するのは、技術者の待遇や技術面で優位性を持っている会社が多くなる。

 また、先端技術を扱っている企業は導入に慎重にならざるを得ないが、海外の理系人材の採用に踏み切る会社も出てきている。ここ数年、技術情報の流出事件が頻繁に起きているため、導入には慎重にならざるを得ないだろうが、背に腹がかえられなくなってきているのだ。

 そして、企業は 4)に取り組み、それが限界にきたとき、 5)に至る。ようやく進路を理系に決める学生と理系就職を志望する学生が増え始め、需要と供給のギャップは解消される。

 21世紀に入り、完全に生産・販売の時代からマーケティングの時代に入った。
 マーケティングの時代は市場のニーズを敏感に嗅ぎ取る時代でもあるが、その市場のニーズを満たすのは結局、技術であったり研究開発力であったりする。いわば、技術者や研究者は企業の競争力の源泉なのだ。優秀な競争力の源泉を確保するために、技術者や研究者を求める会社は、会社ぐるみでの改革に取り組まねばならない時期に来ている。

福井信英(ふくい・のぶひで)
慶應義塾大学在籍中にジョブウェブと出会い、インターンシップ生として働き始める。
大学卒業と同時に(株)日本エル・シー・エーに就職。経営コンサルタントとして、学校法人のコンサルティングに取り組んだことをきっかけに、2003年3月に(株)ジョブウェブに転職。
現在、新卒事業部の事業部長として、企業の採用活動のコンサルティングや学生を対象とした各種リサーチ、教育研修コンテンツの作成に取り組む。
1977年生まれ。富山県出身。
福井 信英

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