──プロローグは対象国がコンゴでした。
最初はアフリカ中心に書こうとして、タイトルも石油を意味する「黒い黄金」でいこうかと。ギリシャやアルゼンチンが入ってきたので、「国家とハイエナ」に最終的に変えた。「国家」を入れたのは重厚な内容にしたいと思ったからだ。
──日本ではなじみの薄いカラ売りファンドが活躍しますね。
実際には日本人の「カラ売り屋」はいない。米国にはいっぱいいて50以上、ここ7~8年中国でのカラ売りで儲けて、その数は100近いか。彼らの活動が案件の解説になり、「狂言回し」としても役に立つ。多少世間を斜めに見ているところがあるが、結局見方の正しい場合が少なくない。コンゴやザンビアなどの事情はばらばらのようだが、カラ売り屋によってつなげられた。
西アフリカには怪しい銀行ばかり
──作中の「パンアフリカ銀行」がその役割?
この存在はフィクションだ。ただしスーパーメジャーの一つ、旧仏エルフ(今は合併して仏トタル)は現実にカラ売りをしたり、破綻国家にファイナンスをつけたりしていた。銀行にしたほうが、役割がはっきりする。25年近く前にマネーロンダリングなど数々の悪事が発覚して経営破綻した多国籍銀行BCCI(国際商業信用銀行)をアフリカ版として模した。実際、特に西アフリカには怪しい銀行ばかりがある。
──世界各地のディテールの詳しさも魅力ですね。
もう30年近くロンドンに住んでおり、英国は地元なので楽に描写ができる。たとえば英国では反ハイエナ法案が成立したが、法案審議がパーラメントTVで見られる。ドキュメント化もされている。議会の仕組みや手続きにも独特なものがあって、議場の左右にイエスとノーの部屋があり、賛否の評決はそれぞれの議員入室数で行われる。
──このノンフィクションノベルは色恋ざたなしですね。
男女の色恋が絡んだ筋立てはずいぶん前、昭和40年代までの小説ではないか。それで経済が動くことはもはやない。
──男と男の結婚の話は出てきます。
主役のモデルの息子がゲイで同性婚の立法化を推進してきた人物。米国でのLGBT(性的少数者)状況についてずいぶん詳しくなった。
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