「パワハラと過重労働」が蔓延する日本の職場 結局ストレスチェックでは見抜けない

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長時間過重労働やハラスメントは死に直結するんです(写真:aijiro / PIXTA)
電通の女性新入社員過労自殺問題の波紋が広がっている。全国でも数少ない、労働現場と精神科の医療を結び付け対応する「労働精神科外来」の医師が見た過労自殺の現状。そして昨年12月から制度化されたストレスチェックの落とし穴と、働く側の心構えを、『ストレスチェック時代のメンタルヘルス』を書いた代々木病院精神科科長の天笠崇氏に聞いた。

労働問題による精神疾患の増加

──内閣府の発表では2015年中、勤務問題が原因の自殺者数は2159人でした。

1998年から自殺者数年間3万人時代が続き、今その数は減ってきています。が、健康問題や経済問題を苦にした自殺の減少に比べ、勤務問題が理由の自殺の減り方は緩やか。労働問題で精神疾患になられる方の数はどんどん増えています。

──近年の過労自殺の特徴は?

大きく4つ。まず女性の事例が目立ってきている。そして20〜30代の若い世代や派遣社員が増え、従来の長時間過重労働に加えパワハラの関与したケースが増えています。職場で互いに尊重し合う空気がないがしろにされてきている。職場内の助け合いが消えつつあるというか。

その背景に、企業の成果主義、売上利益第一主義がまずあって、従業員の健康や命、安全はその次という風土があると思う。それを逆にして、健康、命、安全を第一に置く経営をと、われわれ精神科医や産業医が声を上げなきゃいけない時代になってしまった。長時間過重労働やハラスメントは死に直結するんです。

──メンタル不調の未然防止策であるストレスチェックも、形だけになりはしないかと危惧されている。

はい。まずハラスメントに直接対応していない点。一応、上司や同僚からの支援が多いか少ないかも評価項目に入っていて、上司のパワハラがあれば「少ない」と回答するでしょう。けどそれは、ハラスメントの一端を垣間見るにすぎない。長時間労働についての項目も入ってない。努力義務とされた「集団分析」も本来は義務化すべきです。ストレスチェックで一人ひとりのメンタル状態はわかっても、職場環境まで踏み込まなきゃ改善はないということです。制度化の際、政労使の使用者側の委員たちから義務化はしないでくれと抵抗があったようですね。

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