日本人の「サムライ型」労働は、もはや限界だ

「電通過労自殺」はドイツからどう見えた?

「サムライ魂の押し付け」が若者の生命力を削り取っている(写真 :HHImages / PIXTA)

大手広告代理店の電通に勤めていた高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺したニュースは大きな注目を集め、国内でも広く報じられたが、その反響は海外にも及んでいる。筆者が暮らしているドイツの有力紙でも、電通の過労自殺問題が取り上げられていた。10月24日付けのフランクフルター・アルゲマイネ紙では、日本の労働環境を「成果ではなく、いまだに何時間働いたかによって評価される」と評している。10月17日付けの南ドイツ新聞の記事では、「過労による死が死因として認められるのは日本のみである」とも指摘されていた。

現代の会社と、かつての「藩」は似ている

ドイツから見ると、日本の会社に勤める労働者は、まるで藩に仕える武士のようにもみえる。現代の「会社」も、「藩」に置き換えて考えると、日本の労働者を追い詰める多くの論理を説明できる。上からの命令は何よりも優先、言い訳はしてはいけない、忍耐こそが美徳である、といった考え方は、藩のルールに従い、藩から脱することを許されず、藩主に生涯仕えなければならないという江戸時代の武士の生き方に通じるところがある。

「出来ませんは甘え」というのは理不尽な言い分のようにみえるが、名誉を重んずる武士にとって「甘え」は見過ごすことができないものだ。世間体とまわりの空気を気にして、自ら逃げ道をふさぐ。日本には、今でも驚くほど「サムライ的な考え方」が深く根づいているのではないだろうか。

若者が会社で出会う上司は、そういった「サムライ型」労働をこれまでやってきた世代の人が多い。彼らは、そのワークスタイルが自分を成長させてくれたと思っている。だから、若者にも同じように、「身を粉にして会社に尽くせ」と教えることになるのだ。こうした「サムライ魂の押し付け」が、若者の生命力を削り取っている。

日本での留学経験があり、日本企業相手に就職活動しているアレックスさん(24)に今回の「電通過労自殺」について聞いてみると、次のような答えが返ってきた。

「日本人は仕事を一番に優先させるから、そんなことが起こるのでは。協調性を大切にすることによって、断るという選択肢がなくなって追い詰められるんだろう。日本で働くなら長時間労働はある程度は仕方ないが、長時間働いたから何になるの?と思う」

「西洋」を代表する経済大国のひとつであるドイツでは、企業と労働者を結んでいるのは、忠義ではなく契約だ。労働者が企業に求めるのは、自分のやりたいことをやれる環境と、それを正当に認められること。いたってシンプルで、ドライな考え方だ。これは、いわゆる西洋の「騎士道精神」にも起因するのかもしれないが、ドイツの2つの歴史的背景も大きく影響していると考えられる。

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