「パワハラと過重労働」が蔓延する日本の職場 結局ストレスチェックでは見抜けない

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──労働者と労基署は同じ歩調になってきたとして、では企業側の対策はどう感じておられますか?

まあ、徐々に進んではきています。

ただ今回の電通過労自殺事件には驚きました。そもそも日本のメンタルヘルス対策を大きく後押ししたのが、1991年に電通入社1年5カ月で過労自殺した青年の最高裁判決。当時も、「取り組んだら『放すな』、殺されても放すな、目的を完遂するまでは……」「周囲を『引きずり回せ』、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる」などの苛烈な言葉が並ぶ電通社員心得「鬼十則」が、そうとう問題視されたたかれたのに、まだ生き残っていたのだから。

1991年電通事件の到達点が過労自殺認定基準や過労死等防止対策推進法で、今回の第2幕が長時間労働規制法案や勤務間インターバル制度、ハラスメント防止法をもたらすとしたら、さすがは広告代理店ですよ! メンタルヘルス対策や従業員大事の経営がどれだけ尊いかを宣伝してくれたんだ、悲痛な犠牲を伴ってね。

死ぬことではないはず

『ストレスチェック時代のメンタルヘルス―労働精神科外来の診察室から』(新日本出版社/192ページ)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

──働く側の自己防衛策は?

まず、仕事と自分に距離を取る。仕事が本当にあなたの最終目的なのかつねに問う。何のために仕事するかといえば、おカネ、家族、自分の存在価値の確認、人それぞれでしょう。だけど死ぬことではないはずです。わが仕事・わが社じゃなく、この仕事・この会社と距離を置くんです。

そして心臓がドキドキするとか肩が凝るとか、この症状が出たら危ない、即休養という自分の限界サインを見つけておく。もしもうつ病になってしまったら勝手な自己判断で治療を中止しないこと。その場合10年間に5割が再発している事実を念頭に置いてください。回復期は波の高低を小さくするために、調子のよいときは6割主義で。5個やれそうでも、あえて2個はやらないということです。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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