日本は芸術の「社会的役割」を理解していない

橫尾忠則氏「芸術作品は社会的発言をする」

「無頓着は僕の『商標登録』のようなもの」と話す、橫尾忠則氏(撮影:梅谷秀司)
80歳を迎えても、絶えず自らに変化を求めることで新たな創作を切り開く芸術観とは。『死なないつもり』を書いた橫尾忠則氏に聞いた。

ずっと「死」が基本的なテーマ

──ぎょっとするタイトルです。

死がずっと基本的なテーマになっていた。20代の後半で死亡広告を出したり、自殺したポスターを作ったり。最初の作品集が『横尾忠則遺作集』であり、普段の物の考え方にも、自分を死んだと仮定して、死後の世界から生の世界を見ている発想がある。一般の人は死をひとごとと考えていて、自分のことと考える人は少ない。でも僕の年齢になると、ことさらリアリティを持ってくる。ついこの先のドアを開けると死の世界があるように身近に感じる。

──死後の世界から見ている発想とは。

生きていれば楽しいこと、苦しいことがあるかもしれない。だが、どちらを選ぶかは本人次第とはいえ、世の中に苦しいこと楽しいことは実はそんなにない。第三者的に見れば苦しくもないことに苦しみ、それが本人にとっては大問題だったりする。本来は大自然の中でどれが美しくてどれが醜いかなどなく、ただ存在しているだけだ。その人の美意識で決まる。決める側の人間の問題なのだ。

──その発想が、ご自身が無頓着である根源ですか。

無頓着は僕の「登録商標」のようなものだ。まじめで正直に生きることが正しいようによくいわれる。それは社会に対してか、自分に対してなのか。社会のためというのは大義名分的には美しく聞こえるが、基本は自分に忠実なことだ。子供のときはだいたい無頓着。大人になるにつれて、無頓着さがそぎ落とされていく。それをなお持っている人がいる。その大人になりそこなった部分が僕に絵を描かせる。

無頓着であることは気まま、わがままに通ずる。他人から好かれるか嫌われるかといえば、嫌われるほうが多い。自己中心的に見えるからだ。思いの丈を自分の絵に塗り込める。その絵は、描き終えたら僕から離れて独り歩きする。そのとき、絵は社会性を持ち、社会的な発言をする。

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