3つの「選択ミス」が日本を戦争へと走らせた

一番の大きな曲がり角はリットン報告書

現実に歴史上起こったからといって、それがいちばん蓋然性の高いことだったわけではない(撮影:大隅智洋)
日本は世界から「どちらを選ぶか」と三度、「戦争まで」の10年の間に問われた。それでもよりよき道を選べなかったのはなぜか。『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』著者の加藤陽子・東京大学文学部教授に話を聞いた。

 

──1941年の宣戦布告まで10年間に三度、問われたのですね。

リットン報告書、日独伊三国軍事同盟、それに日米交渉。つまり1932年にリットン報告書を受け取るかどうか、20日間で急いで三国軍事同盟を結ぶかどうか、1941年4月に始まり太平洋戦争の直前まで行われた日米交渉を妥結して、米国と戦争をしないことにするかどうか。「憲法原理」で譲れない部分の戦いだった。

「憲法原理」で譲れない部分の戦いとは?

──憲法原理とは。

フランスの思想家・ルソーは、戦争がなぜ起こるかを一言で答えてくれている。戦争は、主権や社会契約に対する攻撃であり、敵対する国家の憲法に対する攻撃という形をとるものだと。この場合の憲法とは、具体的な条文ではなく、その社会を成り立たせている基本的秩序、憲法原理を意味する。

私が未練がましく、戦争において「たら」「れば」をしつこく言うのは、現実に歴史上起こったからといって、それがいちばん蓋然性の高いことだったわけではないからだ。

──いちばん高くはない?

すぐに思い浮かべることができるのは最近の自然現象、熊本の地震だ。蓋然性が高かったわけではなく、次に地震が起こる確率は0.3%と学者が言い切れる事例だった。それでも、起こった。戦争は、交渉がいろいろな意味で失敗して起こる。戦争についてもその前に学者が予想していれば、こういう条件があってそれで戦争が起こる確率はコンマ以下だったと言ったかもしれない。

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