「高い目標を設定し、手にするまで押して押して押しまくる」
次期アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ氏の「取引の極意」だ("Art of the Deal"より、筆者訳)。困難を極めた選挙戦を勝ち抜いたトランプ氏の弁だけに説得力がある。
その突破力を、今、誰よりも期待しているのはアメリカの金融関係者だろう。トランプ氏が次期大統領に決まってから、ほぼ最弱セクターだった米国の金融株は復活した。時価総額は12%、約13兆円も上昇している。
最も高くついた法律?「ドット=フランク法」
最大の要因は、トランプ氏の大統領移行チームが、ドッド=フランク法を「dismantle(解体する)」と宣言していることであり、大幅な金融規制の緩和が期待されている。まだ共和党は合意しているわけではない。にもかかわらず、この一言が金融機関の価値を引き上げる、ドッド=フランク法とは何なのか。
ドッド=フランク法は2010年に成立し、翌年施行された。リーマンショックに象徴される金融危機の時に金融機関を税金で救済したことで批判された米国政府が、金融機関に安全安心な運営をするよう徹底的に義務づけたものだ。提案者は、米議会上院のクリス・ドッド氏と下院のバーニー・フランク氏である。
条文は1000ページにもわたり、難解な法律用語に耐えて毎日6時間ずつかけたとしても、読破するのに1カ月以上かかると揶揄された。ドッド=フランク法の順守のためのコストはほかのどの法律よりも高くついたといわれる。2010年の成立から2016年までの6年間で360億ドル、約3.7兆円に上ったという試算もある。
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