知られざる「ハイエナファンド」の極悪非道 日本人が知らないし烈な国際金融バトル

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──NGO(非政府組織)が加わり三つどもえのバトルになる場合も。

手掛けるヘッジファンドだけでなく、腐敗国家に国連憲章に基づくNGOが絡み、三つどもえの闘いになっている。この本では沢木容子の名前でご登場いただいたが、NGOのロンドン事務所で働く日本人が渦中の人になっているケースもある。

──「チャンパーティ」はじめキーワードが多様です。

訴訟で得られる利益の分配を目的に、弁護士が訴訟に参加する行為をいう。訴訟の濫用につながる非倫理的行為とされる。昔からのコモンロー上の原則だ。パリパス(ほかの債権者に劣後しない)、ソブリンイミュニティ(国家には他国の裁判管轄に服する義務はないという国際慣習)は国際金融の「いろはのい」で、これらの要素も盛り込んだ。

黒木亮(くろき りょう)/1957年生まれ。早稲田大学法学部卒業、カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社に23年余り勤務し、国際協調融資、プロジェクトファイナンス、航空機ファイナンスなどを手掛けた。2000年『トップ・レフト』で作家デビュー。1988年から英国在住。(撮影:大澤 誠)

──日本では報道が少ない。

関心を持ったきっかけは2006年の英『ユーロマネー』誌の記事だった。コンゴをめぐる一件が、原油タンカーの差し押さえなど具体的に報道されていた。金融は書類の世界が基本のはずが、米国での法廷に仏BNPパリバを引っ張り出したり、相手国の高官と直接交渉したりと、ダイナミックな内容で興味をそそられた。その後10年から資料を集め、13年ごろから書き始めた。

──金融ではありがちなスキームとか。

大阪の弁護士から指摘を受けた。国内の金融機関がバルクセールで不良債権をサービサーに二束三文で売り、買ったサービサーが全額返せと債務者の中小企業を訴える。その中小企業もけっこうしたたかで、財産を隠したり、債権譲渡の手続きの瑕疵(かし)で争ったりもするそうだ。結局、和解してサービサーはけっこうな倍率の利益を得る。

いずれ日本も似たような状況に

──アルゼンチンの「世紀のバトル」にも日本では関心が薄い。

「世紀のバトル」といわれるぐらい国際金融界では話題になっていた。それが解決できたのは驚きだ。ギリシャの債権・債務では欧州連合との絡みもあって国債デフォルト問題がずいぶん報道されたが。

いずれ日本も似たような状況になると思っている。国債がヘッジファンドに買われているかどうかは別にして、15年後ぐらいには間違いなく国債引き受けができなくなる。ひとごとではまったくない。

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