土佐くろしお鉄道は地方鉄道再生のカギか? キーワードは”まちづくり”と”観光鉄道”

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密接にかかわる「まちづくり」という視点

列車に揺られながら、三陸鉄道の望月正彦社長からお聞きした話を思い出した。三陸鉄道の利用者は震災前も減少し続けていた。その理由として沿線人口の減少や、モータリゼーションの進行といった要因はもちろんあるが、特に宮古駅前にあった県立病院が山の中に移転してしまったことが大きな誤算だったという。通院の交通手段として鉄道を利用していたのは全乗客数の15%。これが消えてしまった。

逆説的にいえば、少子高齢化やモータリゼーションの流れは避けられないが、沿線に学校や病院などの施設があれば、アクセス手段として鉄道は存続することができる。ただ、そうなると鉄道存続うんぬんというよりも「まちづくり」という広い視点で考える必要がある。

もうひとつ思い出したのが、富山市の森雅志市長のお話。富山市といえば、LRTが有名だが、決してLRTありきではなかった。「富山市は人口密度が低いため、ゴミ集配、除雪、介護訪問などの範囲が広く都市管理コストが高い。そのため町をコンパクト化する必要がある」と森市長は言う。そのため、クルマに頼らず暮らせる中心市街地へ緩やかに人を誘導するための取り組みを始めた。LRTの導入はその一環にすぎない。バス路線も充実させている。さらに市の中心部に住んでもらうために、中心市街地に住宅を購入する市民に補助金を出すなどの施策も行っている。鉄道活性化策とは、町の活性化策でもある。

話が前後するが、6月8日、都内で開催された地域鉄道フォーラムに参加した。毎年開催され、全国のローカル鉄道会社の関係者や大学教授などの識者が、ローカル線の現状や今後の課題について語る催しだ。

5回目となる今回は、首都大学東京の矢ケ崎紀子特任准教授が観光を活用したローカル線の活性化について、ひたちなか海浜鉄道の吉田千秋社長が実際の取り組みについて講演を行った。

講演終了後の質疑応答タイムでは真っ先に手を挙げ、質問させていただいた。矢ケ崎准教授にぜひ聞いてみたいことがあったからだ。

「ローカル線には生活路線としての側面もある。全国から観光客を集めるのと、地域住民にもっと乗ってもらうような対策をとるのでは、どちらが効果的なのでしょうか」

矢ケ崎准教授の答えは「観光目的のほうが効果的」というものであった。そもそも沿線人口が減少している地域では、生活路線としての鉄道の役割は低下している。「乗って残そう」と訴える路線も各地にあるが、無理して乗ってもらうよりも、新たに観光としての魅力を打ち出すほうがいいというわけだ。

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