土佐くろしお鉄道は地方鉄道再生のカギか? キーワードは”まちづくり”と”観光鉄道”

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観光鉄道という活路

観光鉄道にもいくつかのパターンがある。沿線に観光地があればよし、なければ、鉄道自体を観光目的にしてしまう。

観光需要の掘り起こしに成功した例として、ひたちなか海浜鉄道が挙げられる。それまで自動車でのアクセスが多かった「海浜公園」「おさかな市場」といった観光スポットへ、鉄道を利用してもらうキャンペーンを打ち出し、一定の成果を収めた。

会場にはいすみ鉄道の鳥塚亮社長の姿も見えた。いすみ鉄道の沿線には目立った観光スポットがない。そこで鳥塚社長は鉄道に乗ること自体を観光目的にしてしまった。ファミリー層向けには「ムーミン列車」、鉄道ファン向けには昭和の国鉄形気動車を走らせている。しかも、羽田空港といすみ鉄道を直通バスで結ぶツアーまで売り出して、全国から観光客を集める姿勢を鮮明にしている。

鉄道車両をリニューアルして集客する例は各地で見られるが、何も車両にこだわる必要はない。以前にも本欄で書いたが、明知鉄道の食堂車は一般的な車両にテーブルを配置しただけの簡素なものだが、あゆ料理や寒天料理といった季節ごとの料理が食べられることでリピート客も多いという。

このように多くの鉄道会社が観光需要拡大に動き出しているが、矢カ崎准教授が強調していたのは、たとえ観光目的であっても「鉄道の活性化とは地域の総力戦である」ということだ。観光は水ものだ。少しでも手を抜くと、効果はすぐに消えてしまう。そのためには地域ぐるみの継続的な取り組みが必要なのだ。もちろん私も小遣いと休暇が続くかぎり、継続的に応援していきます!

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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