西武鉄道は赤字路線を廃止すべきか? バス会社の視点から、「西武toサーベラス」の攻防を分析

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戦略コンサルタントを経て、現在、会津のバス会社の再建を手掛ける著者が、企業再生のリアルな日常を描く。「バス会社の収益構造」といった堅い話から、 「どのようにドライバーのやる気をかき立てるのか?」といった泥臭い話まで、論理と感情を織り交ぜたストーリーを描いていく。
西武株買い増しについて説明するサーベラスの幹部たち(撮影:梅谷秀司)

問答無用の「赤字路線廃止」は論外

西武HDが揺れています。原因は大株主のサーベラス。特にサーベラスによるTOBの条件や役員の追加選任などが、両社の歩み寄りを妨げる争点となっているようです。私は事実関係について論じる立場にはありませんが、企業価値最大化という総論で共同歩調を取るべき両社が、その手段への見解で大きく分かれている(ようにみえる)のは興味深くも感じます。

中でも大きく巷間をにぎわしているのは「赤字路線の廃止」です。サーベラスが赤字路線の廃止を要求したかどうかは別として(サーベラス側は路線廃止の要求について全面的にその事実関係を否定しています)、そもそも西武鉄道は赤字路線を廃止すべきでしょうか? 今回はこのテーマを中心に考えてみたいと思います。

まず大前提として、路線が赤字であっても運行会社として問答無用に廃止するのは論外です。ここに議論の余地はありません。本当に廃止が必要であれば、その前に運行会社である西武鉄道はあらゆる努力をする必要があると思います。

ダイヤの見直しや料金改定、セットプランや割引プランなどの増収施策がまずひとつ。そして安全に影響が出ない範囲での固定費のカット、変動費率の縮小といったコスト削減が2つ目です。要するに赤字路線の黒字化に向けた「企業努力」です。この企業努力の必要性については、西武HDもサーベラスもそれほど議論が分かれるところではないと思います。

サーベラスは2006年にコクドによる増資を引き受けて以降、西武グループの大株主として相応の年月が経っていますから、日本国内の運輸事業の事業環境や事業運営のポイントについて、十分に理解しているはずです。また、サーベラスは西武グループにかぎらず、国内のバス会社をはじめとする運輸関係の事業も多く傘下に収めていますが、それらの傘下会社が極端に安全をないがしろにしているとか、守銭奴的な振る舞いをしているとかいう話は、私は同じ業界の中にいて聞いたことはありません。両社ともに単純に赤字路線廃止をしていいはずがないことは、十分に理解していると思います。

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