しかしながら問題はここからです。
廃止するかどうかは別として、赤字路線が存在し、その状態を放置し続けているとすれば、企業として看過できることではありません。バスでも鉄道でも飛行機でも、大抵の場合、事業収支の足を引っ張っている大きな要素は赤字路線の存在です。赤字路線をきちんと「見える化」するために、路線別の収支管理をするのは企業経営において当然の振る舞いです。
製造業でもサービス業でも小売業でも、商品別利益や店舗別利益などをきめ細かく見て、儲かっていない商品や店舗に手を打つのは基本中の基本ですが、それと一緒です。企業収益を押し下げる現象があり、その部位も具体的に特定できているとすれば、そこに手を打たない道理はありません。企業である以上、当たり前のことです。
鉄道事業は確かに社会インフラではありますが、同時に広く株主が存在する民間企業です。そのような企業が、企業価値を最大化する努力を行い続けるのは当然の取り組みでもあり、事実上の義務でもあります。
路線廃止はよほどのことがないとできない
赤字でも路線維持にこだわり続け、地域の足としてインフラの役割を担い続けるというのは、公益に殉じており、鑑でもあり、美徳でもあります。ですが当然、そんな自己負担にも限界は必ずあるはずで、公共交通だからという理由、インフラだからという理由で、すべての責任を民間会社に任せるというのも、少し気の毒なのではないかと感じます。沿線自治体が路線維持の要望書を出したということですが、社会インフラを強調するのであれば、むしろ沿線自治体は路線を維持するために、西武鉄道と一緒に汗をかく立場ではないのかとも思います。
私がいるバス会社も再生過程で路線統廃合を行いましたが、お客様がほとんど乗っていない地方のバスでさえ(というと語弊がありますが)、路線廃止というのはよほどのことがなければできるものではありません。そもそもその路線は本当に赤字なのか、その路線を利用しているお客様は今後どうなるのか、路線を廃止する以外の選択肢は本当にないのか、そのための十分な努力はしたのか、路線を廃止して本当に想定している収支が改善されるのか……。
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