「昼間のバスって全然お客さん乗ってないね。どうせ乗らないのならあんなに大きなのを無駄に走らせるのではなくて、小さいバスに変えたほうがよほど効率いいんじゃないの?」
社外の会合などに出ていると、このような趣旨のことを時々言われます。
地方の商店街や田園を、空席が目立つ(というよりほとんど空席の)路線バスが走っている風景。この連載をお読みの方も、地方の日常としてイメージいただけるかもしれません。私も正直言って、そんな日常を地方バス事業の衰退の象徴のようにとらえていました。しかし実際にバス事業に関与するようになって、その認識が大きな誤解だとわかりました。
なぜ昼間に空席が目立ち、そしてなぜそれが放置され続けているのでしょうか?
バスの運用では、大は小を兼ねる
バス需要のピークは朝と夕の通勤・通学需要です。特に朝の時間帯は乗り切れないくらいのお客様がいます。そして多くの場合、車両は通勤・通学の時間帯専用ではなく、いろいろな路線や時間でできるだけ効率的に使いまわします。
したがって昼間は空のバスでも、時間帯によっては乗り切らないほどの需要を迎える場合が少なからずあり、昼間帯のバスのサイズを小さくしてしまうと、朝晩のピーク時にお客様を乗せ切れない状況が発生します。
また費用面でみても、バスのサイズを小さくすることで費用が変わるかというと、実は大して変わりません。たとえば人件費は乗務時間で決まりますから、どのサイズの車両でも乗務時間が変わらなければ人件費は当然一緒です。燃料費も車両のサイズでそんなに変わりません。車両を変えれば減価償却としてPLの負担も重くなるし、何より少なくとも数百万単位のキャッシュが外に出ていきます。
したがって合理的に考えるとバスの運用というものは、大は小を兼ねる。昼間空席が相当目立っても、今の大きな路線バスを使用するのが一番割に合うわけです。
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