「悩みを聞いてツラくなる人」の致命的ミス

プロのカウンセラーはなぜ発狂しないのか?

まず、悩みを聞いて辛くなる原因から考えていきましょう。1つ目の原因は、相手の悩みをあたかも「自分のこと」として捉えてしまうことにあります。これを「同感」といいます。

わかりやすくいえば、「うんうん、わかる。私も同じ気持ち」という感覚です。こういう気持ちで聞いていると、例えば、仕事で失敗して落ち込んでいるという話を聞けば、自分が同じ経験をした時の感情と重ね合わせて反応してしまいます。特に、会社の部下などから相談を受けた場合は、「彼に成長してほしい」「頼れる上司でありたい」という気持ちも入ってしまい、自分目線になりがちです。

すると、相手のエピソードを通して、過去の自分の感情を蘇らせ、一緒になって感情の波に飲まれることになります。例えるなら、川でおぼれている人を助けようと川に飛び込んで一緒に溺れてしまう…というような状況です。

「傷のなめ合い」という言葉があるように、こうした話の聞き方は、一種の連帯感を生むのに有効な方法ではあります(相手が同じ気持ちになってくれたという感覚から、一時的な安心感が生まれます)。ただ、自分の抱いた感情は、あくまで「相手と似た感情」に過ぎません。実際は、「似て非なり」の気持ちなので、建設的な関わり方ではありません。

そして、2つ目のしんどくなる原因が、悩みに対するアドバイスをしたあとの感情の揺れです。一般的に、人は自分の経験や知識をもとに相手にアドバイスをしたくなるもの。成功例も失敗例も熱く語った後に、「きっと役に立つだろう」と陶酔する場合もあれば、「こんなことを言ってしまって、相手がますます困ることになったらどうしよう…」と悩み始める場合もあります。要するに、アドバイスをしたあとに様々に思いをめぐらせ、疲れ果ててしまうのです。そして、実際に「アドバイス通りにしたのに、ヒドイ目に遭った」と相談者から逆切れされることもあったりします。

では、どうしたら自分が辛くならずに相談を聞けるようになるのでしょうか。それは、「同感」せずに「共感」すればいいのです。この2つは一見似ている言葉ですが、同感が「私もそう思う」と聞き手主体の感情なのに対し、共感は「あなたがそう思う」という相手主体の感情である点で、違うものです。共感の場合は、相手の感情を受け止めればいいので、「私だったら…」といった自分の気持ちは置いておくことになります。

もちろん、人間である以上、全く感情を動かされないわけではありません。そして、相談者が身近な人であればあるほど、自分の気持ちを切り離すことは難しくなります。それでも、自分の気持ちは封じ、あくまで相手が何を訴えているかに気持ちを集中させます。

一見、冷たい対応にも思えるかもしれませんが、これこそが、相手を尊重する関わり方なのです。なぜならば、いくら同感してあげたところで、問題を解決するのは相手であり、あなたがその人の代わりに生きることはできないからです。共感することで、相手が自分自身を見つめるきっかけつくることこそ、本当の意味での援助になります。

この場合、しっかりと純粋に相手の思いを受け止めるための集中力は必要ですが、自分の気持ちとは切り離しているので、引きずられることはありません。

部下への指示には、同感も共感も必要ない

加えて、注意点もあります。まず、自分の気持ちを相手に伝えたいだけの相談も、現実には多いということ。すぐに答えられるやり方や使い方を相談された場合は別として、気持ちに関する問題の相談は、例え一所懸命アドバイスをしたとしても、相手に本当に有効な場合は少ないのです。

また、仕事で部下に指示するときには、共感も同感も必要ありません。やるべきことに対し、相手の「やりたくない」という気持ちに同感しても「じゃあ、やらなくていいよ」というわけにはいきません。共感して「そうか、やりたくないんだね」と言っても埒があきません。それでは、ただの「優しいだけで、部下を使えない上司」です。仕事においては、あくまで的確に相手にやるべきことを伝えることが上司の使命なのです。

相談の時間を共有することが目的で、自分も楽しいなら話は別ですが、相談を受けることで疲れ果ててしまうなら、相談に対して自分中心に考えてしまっているのかもしれません。

相手の気持ちにフォーカスして、冷静に対応することで、問題の本質を見つめ、それを相互理解できたなら、お互いにとって有意義な相談となること間違いなしです。

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