生命保険に「広告の印象」で入るのは間違いだ 思わず心を揺さぶられる4つの危ない表現

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ただし、長所とは言いかねます。契約当初からの相当期間は、後期の分まで前倒しして高めの保険料を支払う仕組みだからです。先に書いたとおり、将来における保障の価値は不明です。中途解約の可能性も無視できません。保険料が変わらないことも声高に語るべき情報ではないのだ、と認識すべきでしょう。

4 「掛け捨て」ではありません

保険営業の仕事を始めた頃の筆者は「掛け捨て」ではない保険が好きでした。保険料が「戻ってくる」ことを好ましく感じていたのですが、今となっては恥ずかしく思います。まとまっていないおカネ(保険料)でまとまったおカネ(死亡保険金など)を用意できる保険の利点は、多くの加入者のおカネが、不幸が起こった人やその関係者のためだけに使われること、つまり「掛け捨て」になることで支えられているからです。

警備会社に警備を依頼する際、費用の一部が払い戻しされる契約があるとしたら、「警備に必要な費用+払い戻し用の追加料金」で料金が設定されているはずです。有り難がっても仕方がないのです。保険も同じです。掛け捨てにならないおカネがある契約は、「余計な機能が付加されているために、評価が難しくなっている保険」と見ることもできるのです。

これら4つのコピーの共通していること

ここまで書いてきた4点に共通しているのは、人が抱きがちな感情に訴えている点です。要介護者が増え続けていることを不安に思わない人はいないでしょう。インパクトが大きな体験談を「結果論に過ぎない」と片づけることも難しいはずです。誰でも保険料が値上がりするのは嫌でしょうし、自分のおカネが手元に戻ることにひかれる気持ちもわかります。(私は、毎年、確定申告の還付金をなぜか『ボーナス』のように喜んでしまいます)

だからこそ、要注意なのです。保険会社で商品などに関わっている人たちの中には「消費者は必ずしも合理的な選択をしない」「一生涯の安心など幻想にすぎないと思うが、そう打ち出したほうが売れる」と語る人も少なくありません。「情緒的・短絡的な判断をする消費者が多い」と見られていると思うのです。

ありがちな広告などに惑わされなければ、保険選びはとてもわかりやすくなります。一生涯の保障や戻ってくるおカネにこだわらず、発生頻度は低いけれども経済的打撃が重大な事態に、期間限定で備えるだけで良いからです。つまるところ、現役世代の世帯主の万が一や、病気やケガで長期間、仕事ができなくなる事態に備える保険くらいしか残らないでしょう。

それらは、めったに起きないことなので、安く大きな保障が持てます。保険を広範囲に長期間利用してほしい販売側の人たちには困ったことになるとしても、理にかなった保険の使い方です。

確率と経費から設計された保険は、本来、合理的なものです。合理性を軸に保険を語ると、保険会社や代理店の人などから「損得勘定ばかりしている」と指摘されることがありますが、損得以前の問題でしょう。保険はもともと他人事とは思えないリスクなどへの備えには向かない仕組みなのです。合理性を問わずに保険の利用をすすめるのは、多くの人たちに「無理」をさせることにならないでしょうか。

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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