2 まさか自分が大病にかかるとは思ってもみませんでした
ガンにかかり、闘病の末に復帰した有名人の体験が広告に使われるのもよくあることです。働き盛りの人が登場すると「いつガンにかかるかわからない」と心が揺さぶられ、「やはり保険に入っておいたほうが安心だ」と考える人も多いかもしれません。
しかし、少なくとも私は、印象的な体験談に接したあとに保険を選びたいとは思いません。冷静な判断をする自信がないからです。それに切実な体験談とともに提示される商品に格別の価値があるとは限りません。
ある保険会社の診断時に100万円が支払われる「がん保険」で試算してみます。60歳の男性が加入するケースで、見込める給付金の額は「100万円×余命(約23年間)を全うするまでガンにかかる確率63%」で63万円です。これに対し、払い込む保険料総額は170万円くらいになります。
加入者に給付金として還元されるおカネの割合は63万円÷170万円で約37%です。「加齢とともに高まるガンのリスクに備える」というストーリーから離れると「60%超を胴元が取る賭けごと」にも見えてきます。
所定の条件を満たす再発に対応している保険である点を加味しても、50%くらいは胴元が取るのではないか、と想像されます。シンプルな商品の試算例ですから、複数の特約が付加され、手数料などが乗せやすくなっている複雑な商品では、さらに不利な賭けになっているかもしれません。
印象的な体験談に接すると落ち着いて考えることが難しくなるので、警戒したほうが良いのです。
変わらないということは大きなリスクだ
3 「一生涯の保障」が安心
たとえば「一生モノ」と言われる服を、本当に生涯愛用できる人がどれくらいいるのか、加齢とともに変わる外見やトレンドになじまなくなることも多いのではないか、と想像してみましょう。保険に限らず「変わらないということは大きなリスクだ」と考えられないでしょうか。
実際、ある大手生保の入院給付金の支払い実績を調べてみると、この13年ほどの間に、1件当たりの給付額が3万円以上減っています。入院が短期化しているからでしょう。入院保障の価値が下がっていると見ることもできると思います。
逆に契約の価値が上がることもあります。金利が高かった時代の貯蓄商品などがそうです。とはいえ、間違いなく言えるのは、個々の契約の将来における価値を予知することは不可能だということです。
したがって、契約の効力は遠い将来になるほど不確実なものだと、当たり前のことが語られていない情報は敬遠したほうがいいはずです。
「一生涯の保障が安心」と聞くと、「保険料はずっと変わりません」というコピーを思い出す人もいるかもしれません。保険には、たとえば10年ごとの更新時に保険料が上がるものがあります。一方、更新がない保険では、保障が続く期間を通して必要になる保険料総額を均等割りした料金設定になっているので、保険料の値上がりは避けられます。
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