勉強しない大学生が、量産されるメカニズム 悪いのは大学生ではなく「構造」だ

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これらを見れば明らかなように、日本企業だから大学の成績を参考にしないのではありません。日本の大学の成績が企業にとって参考にできないものになっているから、参考にしていないだけなのです。

連載第1回でご紹介したように、ほとんどの大学生がマジメに受けていない授業で、わずかなレポートや出席点だけで合否を判断する日本の大学の成績は、とても大学生の知的能力を計っているとはいえません。こんな状況では、海外の企業のように大学の成績を採用活動の参考にできるはずもないのです。

マジメに授業をしても「得」がない日本の大学の先生

では、なぜ日本の大学では、海外のように大学生の知的能力を計るような成績評価ができないのでしょうか? 大学の先生の立場になって考えてみましょう。

実は大学の先生も、最初は「しっかりと授業をしよう」と思っているのです。ですが、連載第1回で見たように、学生の授業に臨む姿勢には、丸っきりやる気が感じられません(6~7割がスマートフォンをいじっているのですから!)。

「それでは」と学生にやる気を出させるために課題を出したり、評価を厳しくしようものなら、「厳しい先生」「相当まじめにやっても落とされるかも」などと悪評(?)が立ってしまいます。

それでも時間を使い、授業の質を高めよう、評価をきちっとしようと、時間と労力をかけると、研究に割ける時間が制約されます。ふと周りの同僚たちを見ると、適当な授業、簡単なテストをやって授業には時間も労力も使わず、その分を自分の研究に費やし、何本もの論文を書いて実績を積み上げている――そして、そんな手抜きをする先生の授業のほうが、学生の受けがよく、選択している学生は多かったりします。

このように、日本においてやる気のない大学生をきちんと教育しようとするには、大変な精神的労力がいる割に、実質的なメリットがないのです。大学の先生も人間ですから、こんな状況で真剣に教育に向き合えというのは、やはり酷な話なのです。

さて、大学の先生がやる気をなくし、適当な授業をしていると、大学生はどう感じるでしょうか?マジメに授業を聞こうと思っている新入学生も、つまらない授業ではやがてやる気が削がれていきます。そんなに勉強しなくても単位が取れることがわかってからは、ますます授業には力を入れなくなっていくでしょう。

次ページ見事な「負のスパイラル」の出来上がり
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