これらはいずれも、確かに物事の一面をとらえています。ですが、全体を見通せていない「偏った意見」だと言わざるをえません。
私は、日本の大学教育の問題は、学生・大学・企業の三者がお互いに影響を与え合う「構造」そのものにあると考えています。以下で、この「構造」について説明していきましょう。
マジメに勉強しても「得」がない日本の大学生
連載第1回で、アメリカ・中国の大学を卒業した方々への聞き取り調査をご紹介しました。そこでは、多くの人が異口同音に、次のようなことを言っていました。
「よい成績をとらないと就職で困りますから、みな真剣に授業に臨んでいます」
実は海外の企業は、ごくあたりまえに採用選考で大学の成績を参考にしています。その際に使われるのが、GPA(Grade Point Average:成績の平均点)で、その名のとおり、各人の成績を点数化したものの平均点です。
たとえばアメリカの場合は、S・Aが4点、Bが3点、Cが2点、Dが1点、Fが0点として、平均点を計算します。
海外ではこのGPAを、面接希望者の事前選抜に使っています。以前、中国の学生が教えてくれた例では、ある大学の経済学部の場合、コンサルティング会社Aを受けるにはGPAで○○点以上が必要、メーカーのBを受ける場合○○点以上が必要というように、企業の採用試験を受ける際の、一種の受験資格のように考えられています。このようにGPAを事前選抜に使っているのは、アメリカでも同じです。
そう、海外では、大学の勉強を頑張って成績を上げることに、現実的なメリットがあるのです。GPAが0.5点足りなかったがために、行きたい会社の採用試験を受けることすらできない――そうなる可能性があれば、勉強を頑張ろうという気になります。
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