「産めるときに産みたい」はワガママなのか?

浦安市と連携し卵子凍結を行う菊地医師に聞く

――35歳以上を対象外としたことについては賛否があるかと思いますが、そのあたりについてはどう考えていらっしゃいますか?

34歳以下という年齢制限をしたからこそ、より深刻な人が来ていると感じています。意外だったのは、採卵を決意された15名のうち、3名が既婚者だったことです。ご主人か本人の病気が理由なのですが、ガンではありません。

未婚の方ですが、5名の方は婦人科系の病気でした。子宮内膜症がある方や、AMHというホルモンの値がとても低く、他の病院ですでに卵巣機能の低下を指摘されていた方。 あと、お母さんが乳がんで自分もリスクが高いという方もいました。

日本産科婦人科学会が出している倫理に関する見解(会告)では、「悪性腫瘍などに罹患(りかん)した女性」としており、他の病気については具体的には触れていませんが 、その他の病気による直接の卵巣機能低下、夫側の病気、長期にわたる治療後にしか妊娠できず、その間に加齢による妊孕(にんよう)能力低下が予測されるケースはどうなのか。

旦那さんの病気で、必ず体外受精をしないと出産できないご夫婦の場合、治療があり今すぐに精子を取ることができず、体外受精はできない。ただ、病気が完治するのを待っていたら卵子は老化していくことが分かっているわけです。その場合、先に凍結しておくというのは認められないのでしょうか。

残りの4名は、身近なところに体外受精している40歳以上の女性がいて、その方たちに今のうちに凍結しておいた方が良いと強く勧められたという方でした。

日本は、体外受精が世界で一番多い国。2013年の統計だと、24人に1人は体外受精で生まれた子どもです。これだけの人が実施しているんです。ただ、体外受精であっても、年齢とともに成功率は下がっていきます。母体もそうですが、卵子の老化も理由の一つ。若い時の卵子を取っておくという選択肢はあってもいいと思うんです。

賛否両論ある中でも「未受精卵子」の凍結を実施する理由

――あくまでも選択肢のひとつということですよね。ガンだったり、それ以外の病気だったり、将来への不安だったり、理由は人それぞれ違ってもいいと。

子どもが欲しいかどうか、ということを夫婦それぞれに決める権利があります。1994年の国際人口開発会議でも話題になりました。でも、日本では浸透していません。自分の体を使って妊娠すること、リプロダクティブヘルス、その選択をすることは権利なのに。出産できる能力には限りがあることなど、妊孕能についての知識が普及していないこと自体、権利が侵害されているとも思われます。

理由はそれぞれでいいんです。

実は、今日はガン患者さんの卵巣を凍結しました。今日の方はまだ若いし、上手く妊娠まで持っていけるのではと思っています。昔はガンになったら、命が助かればいいという考え方がほとんどだったけれど、だんだん生存率が上がってきて、若いサバイバーはガン治療の後に妊娠を望めるようになったのです。

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