「乳がんサバイバー」の"輪"は企業に広がるか いま求められる、乳がん患者との付き合い方
7月22日の夜、人気(ひとけ)のなくなった東京・中央区の聖路加国際病院の一室には、30~50代の女性を中心に十数人が集まっていた。
「不安に駆られて、いくら使ったかわからないほどおカネを使って、ストレス発散してしまうんです。最近は部屋の模様替えをして、株も買っちゃった」。そう話すのは、乳がん患者のAさん。
「地道に積み立てを始めてください!」。ファイナンシャルプランナー(FP)の黒田尚子さんがビシッと言い放つと、場は女子会のような笑いに包まれた。
乳がん患者に広がる"Ring"
7月に始まったこの集まりの名は「おさいふRing」。1コースは3回の会合から成る。初回にがんとおカネの問題についてFPの講義を受け、2回目に乳がん患者がグループで話し合い、3回目に必要に応じてFPと個別相談を行う。FPの黒田さん自身、2009年に乳がんと診断され、右乳房を全摘した“乳がんサバイバー”。患者の悩みに温かく耳を傾け、おカネのアドバイスをしていた。
「お見舞いや職場のカンパのお返しをしたり、いろんな知り合いに会っておこうと思ったりして、交際費がかかるんです」「将来の妊孕性(妊娠する力)を考えて、卵子凍結をするのにかなりかかってしまいました」
治療費だけではない、がん患者として生きていくのにかかってくる、リアルなおカネ。一人一人状況は違うが、ときに笑って「すごくわかる!」と共感しあう、そんな活発な話し合いが持たれていた。
聖路加国際病院は山内英子・ブレストセンター長のリーダーシップの下、乳がん患者向けのグループ療法とピア・サポートの集まりをいくつも設けている。
治療と仕事の両立を支援する就労Ring(看護師と社会保険労務士が参加)、抗がん剤による髪、まゆ毛の脱毛やつめの黒ずみをカバーする方法を教えるBeauty Ring(看護師とヘアメークアーティストが参加)、35歳以下で乳がんを発症した若年性乳がんの患者向けのPink Ring、ホルモン療法で太り、再発率が高まることを防ぐShape Up Ring(管理栄養士、運動療法の専門家、コーチングの専門家が参加)などだ。
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