激安”お手伝い移民”が、日本の奥様を救う シンガポール・香港にあって、東京にないもの

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海外からのお手伝いさんへの人権侵害

なお、自宅という最もプライベートな空間に異国から1人女性を迎え入れるのだから、それに伴うさまざまな問題も生じる。

先日、香港で新聞を読んでいたら、サウジアラビアでインドネシアからのお手伝いさんに対する虐待がニュースになっていた。しばしばシンガポールでも問題になるのだが、お手伝いさんが契約に反して朝6時から深夜1時まで働かされ、週末の休みもない、というとんでもない人権侵害が頻発している。

また香港ではほとんどの高級マンションに、“お手伝いさん向け”の粗末な窓もない小さな部屋があるのだが、あの窓もない差別感あふれるナニー部屋の造りは何とかならないものだろうか。ナニー部屋すらもない家では、キッチンや廊下で彼女たちがごろ寝を強いられている。ナニーのおばさんたちの心境を考えると、異郷で独り働き、母国にいる子供の生活費や教育費を送金する境遇のつらさは、いかほどのものであろうか。

今後の日本の移民政策については後ほど議論するが、仮に日本でも海外からナニーを多く雇い入れる日がくれば、思いやりと感謝の気持ちをもってナニーのおばさんに接していただきたいものである。

せめて畳と暖かい布団の上でナニーのおばさんにお休みいただきたい。そうであってこそ、数ある出稼ぎ先の国の中から、優秀なナニーの皆さんに「できるなら日本で働きたい」と思ってもらえるのだ。

ナニーが救う日本経済

さて、女性の社会進出の必要性が日本で長らく叫ばれてきた。某米系投資銀行のストラテジストが「ウーマノミクスが日本を救う~日本女性の労働参加率増加で15%GDP成長」といったプレゼンをよくしている(ちなみに私はあまり信じていないが)。

短期的には単に男性がジョブマーケットから追い出されて失業率が高まるだけな気がするが、仮に女性ならではの新分野のサービス産業が生み出されるか、ないし数多くいらっしゃる窓際族の男性社員より優秀なパフォーマンスを上げる女性がより生産性の高い仕事についてくれれば当然、経済成長の助けになるだろう。

また経済面のみならず、女性が持って生まれ努力して磨き上げた才能を社会で開花させる、という女性の自己実現を成し遂げる機会が増える(念のために加筆しておくが、専業主婦も立派な生き方のひとつであり、それを自己実現とされる方に異存は毛頭ない)。

実際のところ、ナニーが家事全般をみてくれる香港やシンガポールでは、結果的にビジネスでも政界でも官庁でも、女性の社会進出が先進諸国に比べて進んでいる。ひるがえって日本では、「子育てを機にキャリアが断絶される」「結婚して子育てで働けなくなるから女性の雇用に消極的」といった問題がしばしば取りざたされている。

日本でも、女性が子育ての重荷から解放されれば、子供を産むインセンティブにもなるだろう。また共働きから生じる家計所得の向上も、子供を複数名育てる経済的余裕につながる(なお私の住んでいるフランスでは子供が生まれたらアルジェリアやモロッコからナニーを雇う補助金まで支給される)。

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