「うわぁー、人、人、人、人ばっかり! それも、おばさんばっかりや~~!!」
狭い歩道の脇にダンボールを敷いてトランプゲームに興じる民族衣装のおばさん。辺りかまわず大声で大爆笑するお姉さん。音楽を聴いたりYoutubeでドラマを見たり、歌いながら踊り出したり……とそのもようは自宅の居間さながらである。
香港のヴィクトリア公園やセントラルの歩道は、日曜日、週末に1日だけ自由な外出を許されるフィリピンやインドネシアから来た、数万人規模のナニー(お手伝いさん)で埋め尽くされる。辺り一帯にインドネシア料理のスパイシーな香りが辺りに立ち込める。ナシゴレンはおいしそうだが、あの魚を揚げたフライは私の好みでなさそうだ。
女性進出の進む香港やシンガポールでは、一般の家庭でもインドネシアやフィリピンからお手伝いさんを雇っていることが多い。価格は激安で1ヵ月4000香港ドル(約4万円)である。
美食家のあなたはナニーのおばさんに好みの味付けを覚えてもらって自宅の家庭料理も作ってもらうだろう。4つも部屋がある大きな家の掃除も、3人も生まれてしまった子どものベビーシッティングも、手間のかかる料理も買い物も、なんでもかんでも月4000香港ドルでやってもらえるのだ。
この“お手伝いさん”はエクスパット(本社から海外支社に派遣される社員)の奥様方に大好評で、私のご家族連れの同僚は、中国人でもインド人でもアメリカ人でも、ほぼ全員お手伝いさんを雇っている。
韓国人の先輩は当初、文化の違いもあるから自国からお手伝いさんのおばさんを連れてきたのだが、文化的に年上のオバサンには気を使わなければならないうえ、海外まで来て働いてもらうには月25万円程度と非常に高く、結局フィリピンのおばさんに来てもらうことにした。これは日本でいわゆるシルバーシッティング(高齢者による家事手伝いサービス)があまり普及しないように、同じ国の年上の他人に物事を頼むのは、どうしても儒教文化のバリアが高く立ちはだかるのである。
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