岡島悦子「勉強や資格より、実践と人間力」 まずはバッターボックスに立つ

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 「人間は弱い動物である」という前提をわきまえる

対象の人間の行動を徹底的に観察して仮説を立て「このタイプの人はこういうモチベーションで動いているのではないか」という法則、すなわち、一定のアルゴリズムを見極め、それを蓄積していく。感じるのではなく、徹底的に論理的に法則を考え、仮説検証するという方法である。仮説検証の対象が必要なので、日頃から漠然と生活していないで、色々なことに興味を持ち考え尽くし、自身のデータベースを構築することが大切だ。

たとえば、出版社で編集者をしている人は、「子供の頃から家に本が沢山あった人が多い」「文字が死ぬほど好き」「知的好奇心がすごく強い」「フローよりもストックが好き」といった感じで仮説を立ててみたらいい。

そういう風にして、「あるタイプの人は、どのボタンを押すと最も本質的に動いてくれるだろうか」と日頃から考えていると、直感の精度が上がっていく。おそらくこれは、多くの優秀な経営者がやっていることだと思う。営業職と研究職の人の原動力は違うし、褒め方も異なるということは恐らく多くの方が理解できると思うが、これをもっと細かいメッシュ、高い解像度でチェックし蓄積するということである。

結局、人間力を上げないと、最適な戦略を描いても、人が動いてくれず、「笛吹けど踊らず」という状態で結果を出すことができない。経営で重要なことは、「組織は人間という動物の集合である」ということをあらためて認識することではないだろうか。承認欲求などの欲がある、変化を嫌う傾向がある等、「人間は弱い動物である」という前提をわきまえた上で、弱さの罠にはまらないために仕組みで担保する方法を考えたほうがいい。精神論だけで「強くなれ」と言っている時代は、もう終わったのではないだろうか。

(撮影:今井康一)

※インタビューの続きは1月28日(月)に掲載します

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