岡島悦子「勉強や資格より、実践と人間力」 まずはバッターボックスに立つ

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これに対し、ベンチャー企業で働く人の中には、バッターボックスに立ち続けて実践は積んでいるが、得られた経験や知識を汎用化できておらず、他の場での再現性がないというケースも多い。その会社、そのタイミングだったから実績が出た、と言われてしまうパターンである。起業家の中には、実践してみて知識不足を痛感し、こっそり勉強しておられる方も多い。

いずれのケースも、実践してみて知識が不足していると思ったら勉強し、そしてまた実践というジクザク型の向上をしないと、市場価値という面積があがっていかない。

今の時代は知識より実践

その文脈で言うと、今の時代は知識よりも実践の重要性の方が高まっている。

岡島悦子(おかじま・えつこ)
ヘッドハンター、プロノバ社長
グロービス経営大学院教授
筑波大学国際関係学類卒業。ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。三菱商事、マッキンゼーを経て、2002年グロービス・グループの経営人材紹介サービス会社であるグロービス・マネジメント・バンク事業立上げに参画。07年に独立し、プロノバ設立。ベンチャー企業、再生中の企業に対し、COO/CFO/経営企画室長を中心に、年間約100名の「経営のプロ」人材を紹介。経営共創基盤アドバイザー。ダボス会議運営の世界経済フォーラムから「Young Global Leader 2007(世界の若手リーダー250人)」に選出される。著書に『抜擢される人の人脈力

ここ10年ほどの間に、ビジネススクールや戦略コンサルティングファームが次々と経営知識やスキルを本の出版等で開示したことで、経営知識やスキルはかなり可視化されてきている。従って、そうしたノウハウ自体は差別化要因になりにくく、「人を動かし、実践で使って結果を出す」ことがより重要視されるようになってきたのだ。

残念ながら、資格自体は段々とコモディティ化してしまっている。ノキ弁(固定給がなく事務所の軒先だけを借りる弁護士)ならぬ、ノキMBAのような人も多数出現している。いたずらに資格や知識を追うより、その取得の目的が何かを明確にし、実践の機会を勝ち取る努力をし、実践しながら実行力や人間力など横軸を広げる努力に注力するほうが差別化はでき市場価値が高くなりやすい。

結局、経営課題が複雑でスピードの求められる時代、一人でやれる仕事は少なくなっている。周囲のメンバーに実行してもらうこと、すなわち「人を動かすこと」によって結果を出すことが求められる。

そのためにも、様々なメンバーのモチベーションの源泉とは何なのかを理解・観察する力、「理解、納得、行動」のプロセスを進めることのできるだけのコミュニケーション能力、最後は「この人のためになら動こう」と思わせるだけの人間力、といったものが不可欠になってくる。この力をどれだけ高められるかが、成功の確率を大きく左右する。

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