”暴走老人”を止められるのは若いあなた
アジア外交をめぐる世代間ギャップ

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日中領土問題をめぐる中国の視点

まず中国の皆さんからの視点からすると、2012年はかなり日本側から挑発を受けたということになっている。国交回復40周年の慶事で、友好ムードを盛り上げなければならないのに、2月に早々と、名古屋市長が“南京虐殺事件”を否定する発言をし、“釣魚島”(尖閣諸島)の島々に日本名をつけ、あげくに国有化までして“1972年に合意した現状維持”をはるかに逸脱する行為を重ねてきた、もう我慢できないと。

中には冷静に、「中国は中日関係の大局を把握し、両国合わせて15億人に迫る人口が数名の政治家の扇動で右往左往してはいけない」と言う論者もいたが、総じてどの国でも会場の大きな拍手を得るのは「領土問題に議論は無意味。戦争あるのみ。これ以上日米安保同盟を盾に中国を脅すようなことしても、われわれは承知しない」といった“強硬な”発言である。

さらには「今後アメリカのアジア政策重視も相まって領土問題への介入が強くなるはず。戦争するなら今だ、まだ米国は介入できない!」という超強硬な発言もあったが、冷静な司会者が「まぁまぁ」という感じで興奮する発言者を諌めていた。

番組の中ではアメリカのアジア戦略変更に絡めた発言も目立ち、こんな発言をする人もいた。

「日本は今まで対米外交さえしていればよかったが、アメリカの力が落ち、中国が超大国として浮上する中、米中両睨みの外交にシフトしなければならなくなった。しかし、アメリカは日中が接近しすぎるのを嫌い、昔アメリカがわざと残した釣魚島(尖閣諸島)というコマを使って、中日間の大問題を引き起こさせた。思い通りの展開に、アメリカは笑いが止まらないはずだ」

なお軍事力比較においては、中国の討論番組でよくある展開なのだが、軍事専門家は「中国海軍の力は実は弱く、日米と戦いになったら負ける。自衛隊だけと戦っても敗れる」といったコメントをしていた。「ほんまかいな」という気がするが、「だからこそわれわれはもっと軍備増強が必要だ」という軍備増強論につなげるのが狙いかもしれない。

なお、「現状では両国ともに軍事衝突を望んでいない」という議論がこの中国の番組でも主流だったので、日本在住の読者の皆様もその点はご安心いただきたい。

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