安倍政権が、外交でやってはいけないこと マイケル・グリーン氏が語る日本外交(上)

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総選挙に大勝した自民党の安倍晋三総裁。今後は、経済政策と並んで、外交政策が最大の焦点となる(撮影:今井康一)

自民党の圧勝に終わった12月16日の衆議院選挙。この総選挙がもつ意味とは何か。そして、新首相が、日米関係など外交面で取り組むべきテーマとは何か。ブッシュ政権で国家安全保障会議(NSC)の日本・朝鮮担当部長などを歴任し、現在、米国の有力シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)でアジア・日本部長を務めるマイケル・グリーン上席副所長に聞いた(インタビューは選挙前に実施)。

 

※グリーン氏の日本政治に関するインタビューはこちら

安倍氏のある種のタフさが評価された

――自民党の勝利は、安倍総裁の歴史、防衛、外交に関する考えが支持された結果と考えるべきでしょうか。それとも、他にいい選択肢がなかったため、消去法的に自民党が選ばれたのでしょうか?

安倍氏が自民党の総裁に選出されたのは、外交政策に負うところが大きい。総選挙での自民党の勝利は、有権者が外交政策に関する安倍氏の考えを支持していることを示唆するのだろうか、と問われれば、広い意味ではそうだと思う。

世論調査によると、日本の人々は中国を非常に不安視しており、領土問題に関して、日本に対する中国、韓国、ロシアの屈辱的な動きへの民主党の弱腰な対応に心を痛めている。

安倍氏はある種の強さ・タフさを体現しており、それが支持を得ている。しかしそれは、日本の有権者が、安倍氏の具体的な個々の提案を支持していることを意味するのだろうか。たとえば、韓国との間のいわゆる「慰安婦」問題の解決を図る目的で15年前に発表された河野談話を見直そうという提案を支持しているだろうか。靖国神社への参拝を支持しているだろうか。尖閣諸島に公務員の常駐施設を建設することを支持しているだろうか。私はそうは思わない。

思い出してほしい。石原慎太郎氏が初めて東京都知事に当選したとき、出口調査によると、有権者は近隣諸国についての石原氏の見方を支持しているわけではなかった。むしろ圧倒的多数の人々は、石原氏の断固とした姿勢を評価して石原氏に投票した、と回答していた。

安倍氏の政権復帰は、外交政策に関して断固としたタフな姿勢を支持する幅広い声を示すものだと言えるだろう。対照的に、民主党は、近隣諸国からの圧力に対して弱腰の対応をしてきたように見られている。

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