安倍政権が、外交でやってはいけないこと

マイケル・グリーン氏が語る日本外交(上)

――安倍政権は、外交上の具体的な問題に対し、どのように対処するでしょうか? その対応いかんで、日米関係にはどのような影響があるでしょうか。

安倍政権の総選挙での勝利は、河野談話の見直し、靖国神社への参拝、尖閣諸島への公務員常駐施設の建設などについて有権者が支持を表明したものだ、と結論づけるとしたら、それは大きな誤りだと思う。

マイケル・グリーン
CSIS上級副所長/ ジョージタウン大准教授
1961年生まれ。94年ジョンズ・ホプキンス大学助教授。97年アメリカ国防総省アジア太平洋部局特別補佐官。2004年米国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長兼東アジア担当大統領特別補佐官、05年より現職

これらの問題について、一般の人々に対し「そこから生じる影響と切り離して賛成か反対か」を問えば、大多数はこのうちのいずれの問題についても、「賛成だ」と回答するだろう。

しかし、「河野談話の見直し、靖国神社への参拝、尖閣諸島の公務員常駐施設の建設は、日中関係だけではなく、日米関係やオーストラリアをはじめとする地域の国々との関係をも損なう可能性がある」と告げたうえで賛成か反対かを問えば、人々はこれらの動きに賛成しないだろう。これが現実だ。

河野談話の見直しと尖閣諸島への公務員常駐施設の建設は、日米関係にマイナスの影響を与える可能性がある。これらと比べると重大さは低いものの、靖国参拝も同様だ。

このような理由から、安倍氏の外交政策アドバイザーたちは、これらを実行することの影響について警告している。悪影響を生むことなく実行できるなら、これらの措置は理屈のうえでは支持されるだろう。しかし、日本の対中国戦略に悪影響を及ぼしかねないという理由から、実行に反対する声が優勢となるだろう。このような考え方と対極にあるのが、菅義偉元総務大臣など安倍氏にイデオロギー的な観点からアドバイスを与える人たちだ。

――なぜ河野談話の見直しと、尖閣問題への対応が日米問題に害をもたらしうるのでしょうか。

米国政府内では、これらの措置は割に合わない、挑発的な動きだと受け止められる可能性がある。尖閣問題に関する日本のアプローチについて、米国政府内で深刻な議論を巻き起こしかねないからだ。

ジョージ・W・ブッシュ大統領が政権の座にあった8年間のほぼ全期間を通して、安倍氏は非常に高く評価されていた。安倍氏は、非常に賢明で戦略的思考に長けた人物として、また日本がオーストラリアやインドなどの民主制諸国と歩調を合わせることの重要性を理解している人物として、正当に評価されていた。確かに安倍氏は、日米同盟の重要性を理解していた。

安倍氏は2006年に総理大臣に就任した際、中国および韓国との関係を改善させた。10年前に米国の政権内にいた人たちは、安倍晋三氏について極めて肯定的な見方をしている。日本の外交政策を極めて戦略的かつ賢明に仕切る人物だったからだ。

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