河野談話見直しは愚策 ジョセフ・S・ナイ氏に聞く

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(Getty Images)
大統領選挙直前の10月下旬、米国の外交・安保関係高官OBが超党派で東京と北京を歴訪した。これは「誰が大統領になろうと、米国の東アジア政策は変わらない」とのメッセージだったとみられる。その一員で米国の外交政策に大きな影響力を持つナイ教授に、現在の東アジア情勢への見方を聞いた(インタビューは11月13日に実施)。

ナショナリズムという危険因子

──尖閣諸島をめぐる日中間の対立は深刻ですが、どの程度の危険性があるとみていますか。

誰かが武力攻撃を計画している、という意味での危険性はない。しかし、日中のいずれにも大衆迎合的なナショナリズムが存在する状況下では、偶発事件が想定を超えた対立に発展する可能性がある。2010年にも日中は尖閣諸島をめぐって対立したが、これは酒に酔った中国漁船の船長が海上保安庁の巡視船に船を衝突させたことがきっかけだった。そのことは思い出す価値がある。

中国は、日本政府が民間人所有者から尖閣諸島を買い上げたことは、現状変更を狙った動きだととらえている。野田佳彦首相は「石原慎太郎前知事の下で東京都が尖閣諸島を購入することになれば日中関係に悪影響が出る可能性があり、それを防ぐために国が購入した」と説明しているが、中国はこの説明に納得していない。彼らは「日本には第2次世界大戦後の国際秩序をなし崩しにしようとする、大きな計画がある」と考えている。中国の高官はそのように語っていた。

──それはレトリックなのでしょうか、あるいは本気でそう思っているのでしょうか。

私は中国人の多くが「日本は尖閣諸島の現状をなし崩し的に変えようとしている」と本気で考えているとみている。その一方で、日米間にくさびを打ち込む意図でそのような見方を利用している人もいると思う。

──中国の次期指導部は、権力基盤を固めるまでは日本への強硬な姿勢を続けるのでしょうか。

権力の移行期には、大衆迎合的なナショナリズムへの自制を働かせるのが難しい。中国のネットをのぞいてみれば、ナショナリズムの高まりがよくわかる。その一部は、国の指導者による操作の結果だ。しかし大部分は、政府による操作とは無関係に国民の間に芽生えたものだ。

──日中両国は、どうしたらこの行き詰まりを打開できますか。

今後しばらくの間、未解決の状態が続くのではないかと思う。今回の尖閣購入問題が契機となって、中国は、今まで長い間続いてきた状況は崩れた、もう元には戻らないと判断するようになった。

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