河野談話見直しは愚策 ジョセフ・S・ナイ氏に聞く
では何ができるだろうか。最良のシナリオは、この問題がほかの問題に飛び火しないように、政治的な要素から切り離すことだ。
たとえば英『エコノミスト』誌が提案しているように、尖閣諸島周辺を人の居住を認めない海洋保護区に指定し、この地域の生態系保護に役立てる、という考えがある。
尖閣諸島を実効支配している日本が、主権者としての権利を維持しつつ「わが国はこの島を海洋生態系のためにささげることにする」と宣言するのだ。それで中国が満足するとは思わないが、両国がこの問題を最重要視するのをやめることにはなる。少なくとも、日本人の居住や自衛隊の上陸といった行動で中国を挑発する危険は緩和できる。
──中国が尖閣諸島で極端に挑発的な行動に出た場合、米軍が出動すると考えるのは現実的でしょうか。
尖閣問題は、そこまでしなくても解決策を見いだせる、少なくとも何とか処理できる問題だ。クリントン国務長官もパネッタ国防長官も、尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の対象だ、と明言してきた。尖閣諸島は、米国が1972年に日本に返還した領土に含まれているからだ。しかしその一方で米国は、日中両国はこの問題を決して武力衝突につなげないような方法で処理するべきだ、という点も明確に主張してきた。
──日本は現在、ロシア、中国、韓国との間で同時に領土問題を抱えています。
日本は中国・韓国との関係を熟慮しなければならない。1930年代に後戻りするようなことをしても、日本のためにならない。今日の日本は当時とはまったく異なる。ところが日本には折に触れて、未来に目を向けるのではなく、過去にとらわれた行動をとる政治家がいる。
日本の国家戦略を考えるうえでは、この問題に取り組むことが不可欠だ。しかし、選挙が差し迫っている状況下では、戦略的な考え方と政治的な考え方とが大きく異なることはよくあることだ。
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