「中国リスク」徹底検証 対立長期化に備えよ
11月8日からの中国共産党大会を控え、外務省のある高官は眠れぬ日々を送っている。「日本の財界は、中国の指導者が交代する党大会までは堪え忍ぶだろう。しかし、大会終了後も日中関係が改善しなければわれわれへの突き上げが本格化する。それを思うと憂鬱だ」。
日中関係の悪化は、いよいよ企業業績へ本格的に影響し始めた。10月29日にはホンダが、これまで4700億円だった2013年3月期の連結純利益予想を3750億円へと下方修正。同社は今期の中国での販売計画を75万台から62万台に引き下げており、予想修正の要因の3割程度は中国関連だという。第2四半期決算発表が進むにつれ、自動車以外でも下方修正が続きそうだ。
前出の高官の悩みが深いのは、党大会後も局面打開の見通しがまるで立っていないからだ。関係改善へのロードマップがない中で、時間だけが経過していく。
9月10日に日本政府が沖縄県尖閣諸島の国有化を決定してからの中国側の反発は、すさまじいものだった。9月15日から18日にかけては中国全土で反日デモが発生、一部は暴動化して日系企業が襲われた。野田佳彦首相が「一定のハレーションは考えたが、規模は想定を超えていた」と語ったのは本音だろう。
中国側は国有化決定から1カ月半が過ぎた現在でも、「日本が反省し、誤りを正すべきだ」というコメント一点張り。矛を収める気配はない。11月5日からラオスで開かれるアジア欧州会議(ASEM)でも、正式な首脳会談はできそうにない。
日中首脳の接触は、9月9日にウラジオストクで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の場で、野田佳彦首相と胡錦濤国家主席が「立ち話」をしたのが最後だ。
この場で、胡主席は釣魚島(尖閣の中国名)の国有化を思いとどまるよう、野田首相に直接警告した。ところが、日本側は翌日に国有化を正式決定。「完全に胡主席のメンツを潰した」と中国の外交筋は怒る。