日米同盟と日中関係のバランスをどうとるか
2011年は日本にとって大きな選択の年になりそうだ。米国がなりふり構わぬ財政・金融政策によって、08年のリーマンショックの衝撃から立ち直りつつあるとはいえ、まだ米国内の経済危機の要因が払拭されたわけではない。欧州諸国もソブリンリスクを抱える。
一方で、中国の経済的発展は目覚ましく、世界で存在感を高めている。10年の統計ではGDP(国内総生産)で日本を抜いて世界2位になったことが明らかになった。中国は経済力を背景にして、軍事力を拡充している。10年に起きた尖閣諸島での漁船衝突事件、反日暴動、日系企業での労働者のストライキ、中国が生産を独占するレアアースの対日輸出制限などの事件により、国民の多くが「チャイナリスク」を意識するようになっている。一部では尖閣諸島事件をきっかけに、中国に抗議デモをするなどナショナリズムが高まる動きも見られる。
しかし、依然として日本企業の多くが生産基地としての中国に魅力を感じており、工場進出は止まらない。さらに富裕層の増大により、市場としての中国の魅力も格段に増している。その裏側で日米同盟を強化して、中国の膨張や朝鮮半島危機に対処しようとする政治的動きも強まる。
米・中の二択ではない
09年の民主党政権誕生後、鳩山由紀夫前首相は、「対等な日米関係と東アジア共同体」という基本的政策を打ち出しながら、普天間基地の「県外・海外」移設問題に失敗し自滅した形になった。現在の民主党政権は、鳩山前首相や小沢一郎元幹事長の路線を修正して、日米同盟強化を主軸に位置づける方向にある。ただ、これからの日本の外交的、経済的選択が米国か、中国かという単純な二択でないことは明らかだ。なぜなら米国自体が中国を封じ込めの対象とは考えておらず、世界的な「戦略的パートナー」と位置づけているからだ。
日米中関係を正三角形に変えようとしたのが、鳩山・小沢路線とするならば、現在の民主党政権は、自民党以来の伝統的な日米関係を基軸にしながらも、中国とも戦略的互恵関係を形成するという路線だろう。