日米同盟と日中関係のバランスをどうとるか


米国の衰退を補う日米同盟

『日米同盟の正体』(講談社現代新書)の著者である孫崎享氏(元外務省国際情報局長、元防衛大学校教授)は、「05年の2プラス2合意により日米安保は実質的に改定された。日米安保は極東を対象にした日米の防衛的な条約だったが、日米同盟は米軍と自衛隊を一体化して、世界に広げるものだ」と、その目指す方向を指摘する。もちろん、日本はまだ「集団的自衛権の行使」を認めていないし、菅直人内閣が想定していたアフガニスタンへの自衛隊医務官派遣も見送られた。日米同盟を極東から世界に広げる政治的な障害は大きい。

しかし、05年の2プラス2合意以後の経緯を見ると、米軍と自衛隊の一体化は着実に進み、環境整備がされつつあるように見える。

米国に「ジャパンハンドラー」と呼ばれる一連の政治家、軍人、外交官、学者が存在する。日米関係の節目節目に発言し、日本に影響を与える人々だ。知日派と呼ばれることもある。代表的人物がリチャード・L・アーミテージ元国務副長官だ。

最近刊行された『日米同盟vs.中国・北朝鮮』(文春新書)は、アーミテージ氏とジョセフ・S・ナイ氏が日本経済新聞の外信記者である春原剛氏と対談した本である。ジャパンハンドラーの本音をうまく引き出した興味深い対談である。その対談の主旨は、中国の膨張や北朝鮮が崩壊する危機を想定して、日米同盟を強化しなければならない、というものだ。日米同盟の対象には、中国、北朝鮮の軍事的脅威だけではなく、「温暖化・省エネ対策」から「中国のサイバー攻撃からの防衛」まで含まれる。

先の孫崎享氏は、「戦後期の米国の脅威を追っていくと、第一はソ連。ソ連は封じ込め政策で自壊させた。第二は1980年代の日本の経済力だが、これも衰退した。今直面しているのは中国だが、中国はソ連と異なり世界市場に入り込み、高い経済力を持っている。この経済力を軍事力に転換している」と指摘したうえで、「米国は中国の軍事的脅威を唱えるが、実力で対抗する意思はない。日本を同盟国として利用する効果を狙っている」と語る。日本は日清戦争後初めて、世界の強国かつ経済大国である中国の存在に直面している。同盟国米国と台頭する中国との狭間で、日本は微妙なバランスをとらざるをえない立場にある。

(シニアライター:内田通夫 =週刊東洋経済2011年1月29日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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