私自身も大学留学経験があるので、大学生以上がマンガを読まないことはわかっていました。そこで、私は自分の留学体験をもとにした話を描いていたものの、主人公=私、をあえて高校生に置き換えることにしたのです。
こちらでは、作者の波瀾万丈な体験を描くコミックが高い評価を得ます。「Rock and Roll Love」はまさに、私のドタバタ留学体験をもとにティーンの国際恋愛や比較文化を描いた作品。有り難いことに、ニューヨーク公立図書館が選ぶ「ベスト・ティーンズ・ブック」という賞も頂いたのですが、実は出版にこぎつけるまでに、かなり試行錯誤を重ねました。特に出版社からの要請は「え?そんなことまで突っ込んでくる!?」と驚きの連続でした。
米国人に2等身キャラは通じない
たとえば、デフォルメされた登場人物の意義です。驚いたり喜んだりしたとき、突如キャラクターが感情の起伏を表すために2頭身に変わったりしますよね。日本では違和感なく読まれていますが、アメリカではデフォルメキャラが登場すると「これは一体誰なんだ?子供か?」と、読み手が混乱してしまうんです。もちろんマンガファンは問題ありません。しかし、初めて読む人にはまったく通じないようで、私の担当者にも何度か説明しましたが、結局受け入れられず。最終的にはどうしても、というところだけデフォルメキャラを使うようにしました。
キャラクターのファッションや恋愛描写にも制限があります。たとえば、子供から10代向けのマンガでは、マンガのキャラクターがノースリーブや膝上スカート、ホットパンツなど「露出度の高い服」を着ることは好まれません。というより、担当編集者からダメ出しを食らいます。
男女の「絡み」も親密すぎるものは御法度。「Rock and Roll Love」の主人公、ミサコとジャメインのキスシーンを描くときも、男の子のキャラクターの手の位置に気を遣いました。キスより先、つまり、ベッドに横たわって見つめ合ったり、女の子の胸の位置に男の子が手を置くーーなんて完全にアウト。ケンカで相手の胸ぐらをつかむシーンなんて、もってのほか!それこそ編集者に殴られてしまいそうです。
また、日本の恋愛マンガには欠かせない告白シーンや、壁ドンなどもこちらの読者にはさっぱり通じない。日本でいう「胸キュン」みたいなものが、文化背景の違う読者には通じないんですね。さすがに、ここまで制限や違いがあると何を描いていいのか本当にわからず、一時期悩みすぎてお腹を壊してしまいました(笑)。
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