55万部!「翔んで埼玉」がバカ売れした理由 30年前の復刻マンガが、なぜ爆発したのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
30年前に絶版になったギャグマンガがなぜ55万部のヒット作となったのか?

『このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉』(以下『翔んで埼玉』)という埼玉県を題材にしたギャグマンガをご存じだろうか。2015年12月の年の瀬に宝島社から発売され、3カ月足らずで55万部を突破したというヒット作品だ。だが、これは著者と編集者が汗水垂らして生み出す一般の新作マンガとは違う。30年前のマンガの復刻なのである。

出版不況と言われ続け、「本も雑誌も売れない!」という悲鳴があふれる出版界にあって、なぜこの本はバカ売れしたのだろうか。

マツコの番組で紹介されて火がついた

『翔んで埼玉』は、埼玉育ちの美少年が東京都民の埼玉弾圧に立ち向かうというストーリーで、ここ数年、ひそかなブームの「地方ディス」にマッチしたと言える。ブームの先駆けはドラマ化もされた清野とおるのマンガ『東京都北区赤羽』だろう。地方を愛をもってディスリスペクト(侮辱)したマンガの1ジャンルをこう呼ぶが、2012年にリリースされたスマホアプリ「ぐんまのやぼう」も、一連の流れと言える。

ヒットの原動力は、あった。『翔んで埼玉』が売れるいちばんのきっかけとなったのは、11月にマツコデラックスのテレビ番組「月曜から夜ふかし」で紹介されたことだ。「東京で埼玉県民が虐げられる」ストーリーが衝撃だと、視聴者からのクチコミからマンガの内容が映され、ネットでも拡散していった。

このとき紹介されたのは、「パタリロ!」の著者である魔夜峰央(まやみねお)氏が白泉社から1986年に刊行し、絶版になった『やおい君の日常的でない生活』に掲載されていた「翔んで埼玉」だった。

少しわかりづらいが、30年前に白泉社から出版されたのは「やおい君の日常的でない生活」というタイトルの単行本。ここには「やおい君の日常的でない生活」「翔んで埼玉」「時の流れに」の3本の作品が収録されていた。12月末に宝島社から復刊されたのは、内容はまったく同じものだが、タイトルを『翔んで埼玉』に変えて、収録作品の掲載順も逆になっている。

そもそも1986年に白泉社から刊行したはずのマンガが、なぜ宝島社から復刊されることになったのだろうか。

次ページ宝島社から復刊された経緯とは?
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事