さて、晴れてマンガ家になってから、ある読者からこんな質問が来ました。「なぜ日本のマンガのキャラはみんな白人なんだ?」。日本のマンガに子供の頃から慣れ親しんでいるので特に不思議には感じていなかったのですが、言われてみれば確かに白人っぽいような。マンガのデモをするときでも、生徒たちから黒人のキャラを描いて欲しいというリクエストが多いので、私のマンガではなるべく国際色豊かなキャラクターを登場させるようにしています。
なぜアメリカのマンガには、こんなに表現上の規制があるのか。それは根本にキリスト教などがベースとなった保守的な考え方があるから。性描写、暴力、戦争等の描写は本当に厳しいのです。日本で生まれ育った私は、こうした文化背景の違いを知らなかったため、どこまで表現できるのか、最初のうちはすごく戸惑いました。
怖すぎるアメリカの母親たち
その点、日本のマンガは自由に描けてうらやましいな、と思います。ただ、日本のマンガが英訳される場合、表紙のR指定のシールが貼られることも少なくない。特に日本の少女マンガはアメリカではかなり過激とみられることもあるため、対象年齢は15歳以上と注意書きがされている場合が多いです。つまり、日本でいくら人気のあるマンガでも、それがそのままアメリカで受け入れられるわけではないのです。
私がイベントでマンガ教室やサイン会を開くときも、まずは母親たちが一斉にやってきてこう聞きます。「このマンガは子供が読んでも悪影響はない?何歳の子供が読むのに適しているの?」。リベラルなニューヨークですらこんなですから、宗教的に保守的な家庭が多い南部に行くとさらに厳しいことがあります。こちらでは保護者の発言力は絶大。なので、図書館の司書や、学校の先生たちがすすめるマンガは信頼もあり、売れ行きもいいのです。
何とか色々な苦労を乗り越えて出版しても、そこからがまた大変。なぜかというと、こちらには週刊・月刊マンガ誌がないのでマンガを広めるアウトプット先が非常に少なく、ファンを増やすのも至難の業なわけです。しかも、書店ではカバーもかけずに置いてあるため、立ち読みされてしまうこともしばしば…。
さらに、ここへきてマンガ家を苦しめているのが、デジタル化の波。アメリカでは電子書籍の普及が進んだことで、書店がどんどん閉店。こちらにはもともと、バーンズ・アンド・ノーブルと、ボーダーズという二大巨大書店チェーンがあり、どちらもショッピングモールなどに店を構えていましたが、業界2位のボーダーズは2011年2月に倒産。残ったバーンズ・アンド・ノーブルも苦戦しており、マンハッタン市内の大型店舗も減ってきています。
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