「リーダーはやっぱり体力ですね」 新世代リーダー 山口絵理子 マザーハウス社長

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――デザインが浮かんでくるのはどんなときですか。

山口:素材を触っているときです。ジュート(麻)を始め生地にはそれぞれに「こういう形になりたいんだよ、僕は」という主張があります。それをすくい上げるのがデザイナーであり、それは現場でないとできません。

日本には「デザイナーはきれいな空間で、クリエイティブな作業をする」というイメージがありますが、マザーハウスの場合は現場の素材を触ってから、一緒に工員と作り上げることにエッセンスがあります。

そもそも私が起業したのは、斜陽産業と言われたジュートを持ってきて「これがかわいくなったらどうかな」というイマジネーションが強かったからです。これがもしフランス製のレザーだったら、ここまでは頑張れませんでした。今までクリエイティビティに触ったこともないような仲間たちと、捨てられていたかもしれない素材を使ってやることに大きな可能性を感じています。

過去7年間、セールは一度もなし

――バングラやネパールの素材から聞こえてくるのはどんな声ですか。

バングラは性別で言うと男です。本当に力強くごわごわしていて、ハンマーでたたかないといけないぐらい厚い。素材に男気があるし、スタッフもみんなチャレンジとかミッションが大好きで、「やれ」と言ったらやるんです。

ネパールはすべてが繊細でちょっとすると破れてしまう。スタッフは「やれ」といっても辞めるし、「すごいね」といっても辞めます。ゆっくりしたペースが流れていて、最初にウールで作る商品の納期を聞いたときに「1年後だ」と言われました。それだとトレンドも何もあったものではありません。そういった部分はペースを合わせながらも、日本のお店をイメージしながらネパールで物作りをするのはとてもチャレンジングです。

――マザーハウスの企業としての強みは?

山崎大祐(やまざき・だいすけ)
1980年生まれ。慶応大学総合政策学部卒。ゴールドマン・サックス証券でエコノミスト。2007年に退社し、マザーハウスの立ち上げに加わり現職。

山崎:バングラやネパールでの製造から日本の販売まで一貫して自社で手掛けているところです。とても難しいビジネスモデルで製造と販売が一緒に動いていかないと、うまくいきません。

マザーハウスは過去7年間で1回もセールをしていません。売れ残りも1つもありません。100%消化です。

生産側には一生懸命作っている人たちがいます。彼らが作った物は、最初の1個も最後の1個も同じだけのバリューがあるはずです。僕らはバングラから責任を持って商品を預かっており、お客様に渡さなければならないという点で他社とスタートが違います。セールをしないから最後の1個の商品まで捨てられません。だからこそ、どうしたらお客様の価値になるのか、みんなで売り切ることができるのかを徹底して考えます。

ただ、どんな仕組みを作っても海外の生産と日本での販売のバランスはズレてきます。そこを販売側がお客様に「申し訳ございません」と言って、「このようにバッグを作っていますので1カ月待ってください」と生産側の事情を説明して、心からお願いできるかどうかが、問われます。

一方の生産側は、商品が足りなくて販売がみんな苦労しているということを想像して、いろんな取引先に「こんな状況だから作ってくれ」と頼めるかどうかが、問われます。現場がお互いに修正しながら前に進んできたから今があると最近強く感じます。

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