「リーダーはやっぱり体力ですね」 新世代リーダー 山口絵理子 マザーハウス社長
――社員がどんどん増えてくる中、マネジメント面で工夫していることはありますか。
山口:バングラ、ネパール、日本と各国のスタッフと話す時間を前の10倍ぐらいに増やしています。誰と話しているかというと、影響力を持った中ボスぐらいのスタッフです。
たとえばバングラの工場には80人の工員がいますが、そのうちテーブルリーダーという中ボスが8人います。この人が周りの10人に影響を与えているんです。そういう人たちに対し、生産ラインを見るついでに、私がちょこちょこと寄っていってミシンの隣でぺちゃくちゃしゃべることを大事にしています。
店舗も工場に似てきました。影響力のある人は店長だけではなく、ナンバー3のスタッフだったりもします。仕組みにはできていませんが、個人面談みたいに、コーヒーを飲みながらちょっと話をするようなことがとても大事だと感じています。
昔はお客様に「組織が大きくなったら今のマザーハウスではなくなってしまうのではないか」とよくいわれていました。バングラの工場は2人から始めて、今は80人になりましたが昔と変わったかといわれればノーです。絶対に変わらない。むしろ家族が大きくなったなという感じです。今それぞれのエリアで核になる人が、その下の人を育てる仕組みになってきています。それができたのは中ボス8人のおかげです。お店もそうなってきているからとても楽しみです。
「やればできるでしょ」の一言が大事
――バングラのスタッフのやる気を高めるために、意識していることはありますか。
山口:たとえばこのイチョウのバッグは日本の紅葉をイメージした商品です。バングラの工員に日本の田舎の写真を見せて、「これをやりたい」と何度も言ったのですが、毎回「ノー」。生産効率が悪いし、技術的に難しいし、今まで作ったことがない、というのがその理由です。
でも私は「そうじゃない」と言って、時間の経過とともに色が変わるこのレザーがなぜ美しいのかを説明して、「まずは作ってみましょう」と提案しました。そして、一つ目のバッグができたときには、「ほら、やればできるでしょ」と一言声をかけました。それがすごく大事な気がしています。「ダメだ。できない」と言っていた人たちが、頑張ったことによって認められていく。
そして、バッグを店に出して売れたときには、「あなたたちの頑張りによってバッグはお客さんに届いた。また発注がきた。だから次も新しい物はできる」と彼らに伝えて、良い循環を作っていきます。最近は私がいくと、「次は何を作る」と彼らが聞いてくるまでになりました。
山崎:もう一つ大事なことは彼らにもビジネスとしてちゃんと利益が出るようにしてあげることです。昔は売れても店が少ないから、発注量が少ない。結局、励ますことしかできなかったけれど、今は売れるとすごい量の発注が来ます。みんな必ず「発注どうなの?」「売れているの?」ということを聞いてきます。そして「今まで作った3倍の受注量だよ」というと、すごく喜んでくれます。
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