日本人が抱く「外資系企業」への大いなる誤解 婉曲で不自由でウェットな職場がそこにある

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日本人のなかには、そうした慣習や人間関係を知らず「海外の人と接する場合にははっきり物事を言うべきだ」と勘違いしている“英語屋”が目につきます。そういう人たちは虚勢を張って攻撃的な姿勢で接するので、信頼関係を築くことに苦労します。

勘違い2:上下関係にとらわれず自由に発言すべきだ

相手への配慮と謙虚な姿勢がいかに大切か。私の失敗談をご紹介しましょう。

30代のころ、米国のロシュ社で働いていたときのことです。日本のある会社との提携を検討する会議中、米国人の役員が日本の商習慣について、幹部社員に説明しはじめました。その説明が間違っていたので私は「That is not true(それは違います)」と上司の発言を遮って、説明を始めました。

私の説明が正しいことは間違いなかったのですが、その瞬間、時計の針が止まったように皆が沈黙し、会議室が一瞬凍り付いたのがわかりました。あのしんとした雰囲気はいまだに忘れられません。こうしていま思い出しても、背筋が寒くなるほどです。

会議が終わった後、礼を失し配慮に欠けた自分の行動を心から恥じましたが、お詫びにいくにはあまりに初歩的な失態だったので、しばらく悶々としていたのを覚えています。

日本の企業でも同じような失態を犯せば、その社員にとって大きな汚点となるでしょう。礼儀正しく敬意を払った表現で反対した場合であれば「元気のいい若手だ」と誰かがかばってくれ、上司も大目に見てくれたかもしれません。

たとえファーストネームで親しげに呼び合っているとしても、上司の権限は絶対です。問題発言や行動は、評価に直接反映され、その後のキャリアに影響が出ることも大いにあり得ることです。礼儀を守ることは日本で信頼関係を築くうえで欠かせないとわかっていましたが、米国でも原点は同じという理解がなかったゆえのミスでした。

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