地方創生交付1000億円リストの危険な傾向 あなたのまちの「事業計画」は大丈夫か?

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これでは、もらったはずの資金が、都市部へ流出したり、地元の負担増につながったりするわけです。つまり地方へのバラマキにさえならないのです。

茨城県は登録すると県内のさまざまなサービスを受けられるようになるという「ふるさと県民制度」なるもので約3.9億円の予算を今回獲得しています。初年度の会員目標が1000人、普通に10万円ずつ1000人に配っても1億円。これでは、地方を介した「都市部住民へのバラマキ」です。

必要なのはおカネと人を回す仕組み

さて、このような取り組みの対比となる、民間の取り組みとして、シェアビレッジがあります。秋田県五城目町での第一弾プロジェクトでは、クラウドファンディングを通じて、862人から571万7000円の「年貢」を集めました。村民になると、現地で宿泊などができるクーポンをつけ、地元消費の拡大になるように仕掛けたり、地元産品を販売する仕掛けと連動させています。

いいでしょうか。自治体が国から億円単位の予算を獲得して「都市部の人に予算をつかって」サービスを提供するものがある一方で、民間が普通に「都市部からおカネを集めて」さらに観光消費などをあげるものもあるわけです。しかも達成する目標数値の規模に大差がない。どちらが地方活性化に有効であるかは言うまでもありません。

このように、別に地方に可能性がないのではなく、都市部の人が地方に無関心なのでもありません。あくまで地方創生政策で提案されている事業の計画、目標、推進方法に問題があるのです。

地方創生で本来必要なのは、地方として企画を磨き、地域に投資と消費を集め、絶えず回す仕組みを作ることです。しかしそうではなく、税金で採算度外視の観光客向け、都市部向けサービスが散見される今回の交付金リスト。逆に、地方創生政策に関係なく、民間が自立して作っている「稼ぐ事業」への期待が際立つ結果になっていると感じるところです。

皆さんのまちは大丈夫だったでしょうか。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。

2008年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、2009年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを設立し、既に550名を超える卒業生を輩出。2020年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。

著書に『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

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