富士市の産業支援に全国から視察が来るワケ ノウハウを受け継ぎ、各地に「分身」が誕生
富士山が目の前にそびえる、静岡県富士市。製紙業で知られる人口約25万人のこの街に、行列のできる相談所がある。富士市産業支援センターf-Biz(エフビズ)だ。地元だけでなく、飛行機や新幹線を使って遠方から続々と視察者が訪れるという。いったいこの相談所の何が人々を魅了するのか。現場を探ってみた。
場所は市立中央図書館分館の1階にある。どこにでもあるような薄暗い図書館。入り口横には「日本一高い、チャレンジスピリット。f-Biz」と書かれた赤い看板があり、中に入るとぱっと空気が一変した。壁一面に記事が貼られ、熱心にディスカッションする声が響いている。若いスタッフたちは忙しそうに働き、スケージュールを記したホワイトボードは、小さな文字で真っ黒に埋め尽くされていた。
カリスマ支援家が行う究極の地方創生
「よろしくお願いします」。大きな声で明るく迎えてくれたのは小出宗昭センター長(56)。カリスマ支援家と称される人物だ。静岡銀行員だった15年前、創業支援施設SOHOしずおかへ出向したことがきっかけとなり、産業支援施設の開設と運営に携わってきた。
これまでに手掛けた新規ビジネスは実に1200件以上。故郷である富士市から依頼を受け、2008年にエフビズを開設。チーム一丸となった「ワンストップ・コンサルティング」で次々と成果を出し、話題を呼んでいる。公的な施設なので相談料は無料だ。
「ここで行っていることは、究極の地方創生なんです」
小出氏の言葉が示す通り、エフビズは結果を出し続けてきた。年間の相談件数は4000件以上。そのうち7割が売り上げ向上につながっているという。オフィスの壁一面に貼られている記事は、どれも支援に携わったビジネスにかかわるものだ。エフビズにはいくつものこだわりがある。膨大な経験を基に構築されたノウハウから生まれたものでもある。まず相手を否定しないこと。中には廃業寸前で「何とかしたい」とやって来る人もいる。だからこそ相手を尊重し否定しない。「すごいですね」「もったいないですね」などの言葉で勇気付ける。
そのほかには、おカネを掛けない/オンリーワンを見いだす/具体策を提示する/成果が出るまでサポートする――など、数え切れないほどの“こだわり”がある。「エフビズは病院のようなもの。われわれは中小企業のお医者さんです」と小出氏は例える。
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