富士市の産業支援に全国から視察が来るワケ ノウハウを受け継ぎ、各地に「分身」が誕生

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ここで、分身の中でも特に多くの自治体から注目されたのが、天草での事例だ。熊本県南西部、3つの海に囲まれた島々で構成される天草市。人口8万5000人で減少の一途をたどっている。ちょうど1年前の2015年4月、エフビスをモデルとした天草市起業創業・中小企業支援センターAma-biZ(アマビズ、野間英樹センター長)が商店街の一角に誕生した。ここでの成功がほかの自治体へ大きな影響を与えている。2月には豊永厚志中小企業庁長官も訪問し、国からも注目される存在となった。

天草ではセンター長を全国公募

アマビズ設立の経緯はこうだった。ある時、富士市まで担当者が訪れ「天草でもやりたい」と切り出した。「正直戸惑ってしまった」と小出氏は打ち明ける。全国どの街でも成功するという自負はあったが、まったく環境の異なる島での成果は未知数。一方、「キーファクターになるのでは」との予感もあった。年収1200万円の給与条件でセンター長を全国公募。優秀な人材を確保した。地元の期待は高まり、オープニングイベントには500人近くが訪れた。

天草市内の商店街にオープンしたAma-biZ(アマビズ)

評判は口コミで広がり、漁師や農家など一次産業にかかわる人から大手グループ企業の社長まで、あらゆる人が足を運んだ。相談件数は初年度にもかかわらず1500件以上。「予想以上の反響でした。こんなところを待っていた、と言ってくださる人も。異業種がコラボする横のつながりも増えましたね」と内山隆プロジェクトマネージャーは胸を張る。

かつては東京の一流企業でコンサル業務に携わっていた内山氏。天草に移住して1年が経った。「天草は宝島と言われますが、まだまだ埋まっている宝はたくさんある。これは全国どの地域にも共通していることだと思います」と地方創生の可能性を語った。

今、全国各地から大きな注目を集めるエフビズ。これまでにありがちだった一部の職業、地域しか効果が出ない商店街やご当地の”まちおこし”とは根底から仕組みが異なる。小出氏はほぼ毎週末、各地へ講演やサポートに出掛ける。「仕事という感覚はないです。やりたくてやっているので」と話す。その情熱と広い視野に立つビジネス発想が、全国へ伝播するエフビズモデルの真髄であり、これまでの産業支援センターに足りなかった点ではないだろうか。

大楽 眞衣子 生活ジャーナリスト

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だいらく まいこ

横浜市出身、静岡県在住。大学卒業後、全国紙の記者を経てフリーのライター、生活ジャーナリストに。「主婦」という生活者の経験と目線、「記者」としての取材力を融合させた社会問題、生活ネタを複数のWEB媒体等で執筆中。得意分野は社会問題、女性の生き方、子育て、PTA問題、地方、医療など生活にかかわること全般。男の子3人の母。

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