「馴染みのない取り組みにはプラスの力が働きません。ゼロはゼロのままです。起業家教育について校長の姿勢を発信し、子どもたちに興味をもたせ、教職員への理解周知、保護者への説明、地域ネットワークの構築などに半年をかけ、ゼロをイチにしていきました。イチとなった取り組みはどんどん大きくなります。子どもたちは商品化が見えてくるにつれて意欲が高まり、チャレンジ精神に行動力、協働の姿を発揮しました。保護者の無関心は、期待や声援に変わりました。協力してくれる地元ネットワークも広がり、地域を巻き込んだ総合的な授業とすることができました」
起業家教育を実施する地域は学力が高い?
起業家教育とは、学校において起業家や経営者の話を聴いたり、児童・生徒同士で模擬会社を設立・運営したりする実践的な教育です。一部で誤解されているのですが、必ずしも起業家になってもらうための教育ではなく、起業に関する体験を通じて、フロンティアスピリットを身につけてもらうことが主眼です。現在、キャリア教育の一環として、総合的な学習の時間や課外活動で実施されることが多くなってきました(大学等ではこれに加え、起業や経営のスキルを磨くものを実施しています)。
本年度、経済産業省では、この起業家教育の実施状況について全国の小中学校5583校に対して、アンケート調査で分析を試みました。その結果、小学校の14%(530校)、中学校の24%(448校)で起業家教育を実施しており、内容としては、次のような取り組みが進んでいます。
都道府県別にみると、秋田県、静岡県、福井県、広島県、山口県において実施率が高い状況です。
そして、この地域別実施率は、文部科学省の「全国学力・学習状況調査」の全体の成績と緩やかな正の相関があり、国語Bの成績とはっきりした相関があることが分かりました。
この学力調査は、全国の小学校6年生と中学校3年生に国語と算数・数学の問題等を回答してもらう調査で、Aは主として「知識」に関する問題、Bは主として知識を実生活の様々な場面に活用する力や、課題解決のための構想・実践・評価・改善する力を調べています。国語Bの成績が高いということは、言語を使った発想やコミュニケーションに関する力が高いということで、このような地域が起業家教育を実施している地域と重なる傾向にあるのです。
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