次なる課題として、「どのようなことをすれば良いのか分からない、教師は起業家経験がないので教えられない」など、情報不足や人材不足がハードルとしてあげられています。
このため、経済産業省では起業家教育の事例集を公表してその導入を促進しているほか、経済界と連携して起業家や経営者の学校への紹介等を実施しています。また、文部科学省では、学校支援地域本部により、地域企業や住民などの教育への参画を促進しており、また、平成28年度から、キャリア教育の一環としての起業体験を行うモデルを構築するための事業を実施することも検討しています。
挑戦を肯定する教育を
起業家教育のもう一つの意義として、挑戦する人を応援する社会意識を醸成することがあります。
ベンチャー界隈では、「嫁ブロック」とか「親ブロック」という言葉をよく聞きます。大企業を辞めてベンチャーを起こそうとすると奥さん(あるいは旦那さん)が止めるとか、ベンチャーに就職しようとすると親が止めるといった話です。
実は、研究論文でも、日本においては国民の中で大きな比率を占める「起業無縁層」が起業家活動を抑制していると指摘しています(経済産業研究所「起業活動に影響を与える要因の国際比較分析」(高橋徳行他))。
この起業無縁層とは、起業家活動の国際比較調査で、「自分の身の回りに知っている起業家がいるか」と「起業に役立ちそうな知識や経験があるか」という趣旨の質問の双方にノーと答えた人のこと。起業家を知らない、知識・経験もない、起業から遠い人たちです。日本では、この人たちの比率が全体の7割と諸外国と比して圧倒的に高いのです(米国は25%、英国は47%)。そして、このグループは、起業家の活動を低く評価する傾向があることが分かっており、結果として起業家の活動を抑制しているのではないかと分析されています。
ベンチャー支援の現場感覚からもこの分析はとても腑に落ちるものです。起業促進のみならず、大企業とベンチャーとの連携や大学発ベンチャーの促進においても、社会のいたるところに存在する起業無縁層の「ブロック」が、起業を促進していく上での根源的な問題になっています。
起業家教育をはじめとする実践的な教育で、起業家を知る機会を得る、新しいビジネスを始める模擬体験をすることは、この起業無縁層を減らすことにも繋がるかもしれません。起業家教育でチャレンジ精神、自信、やる気が高まれば、挑戦する人を許容する・応援する人も増えると思います。少なくともそのような挑戦を否定する人を減らすことができることを期待しています。
新学期はもう間近。学校ではすでに新年度の指導計画は決まっていると思いますが、もし総合的な学習の時間などの詳細な内容が未定であれば、起業家や経営者の話を聞くことも一案です。教育現場での小さな一歩から、起業家教育などの実践的な教育が進んで、挑戦を肯定する社会意識が醸成されていくことを期待しています。
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