東大発のペプチドリームが切り開いた新境地

日本ベンチャー大賞受賞企業の横顔

特定のペプチドは、抗がん剤など薬の成分と結合し、がんや白血病などの病巣にピンポイントで運んで治療する最強の「運び屋」になります。また、それ自体に薬効があったり、病気を発見するマーカーになったりします。

しかし、従来は安定性のあるペプチドを量産することは難しく、大手製薬企業の研究所においても実用化までは大きな壁がありました。

そこでペプチドリームは、①安定性の高い「特殊ペプチド」を量産する技術②多様なペプチドのライブラリー③必要なペプチドを選定する技術、の三層の技術から成る創薬プラットフォームを開発し、がんや感染症の薬を作るプロセスに画期的なスピードアップとコスト削減をもたらしました。

この結果、ノバルティス、アムジェン、アストラゼネカをはじめとする世界最大手の製薬企業から共同研究開発の要請が集中。通常の研究受託でありがちな下請け的な関係でなく、プラットフォームを提供する強い立場で取引関係を構築しています。また、自社においても、特殊ペプチドの様々な特徴を活用して独自に医薬品を開発中です。

事業化は「経営のプロ」に一任

ペプチドリームのルーツは、東京大学大学院理学系研究科の菅裕明教授が開発した「フレキシザイム」という世界独自のペプチド合成技術。その事業化のため、東京大学TLOと東京大学エッジキャピタルが声がけをして、医薬・医療機器分野で事業開発経験が豊富な窪田社長と菅教授が出会い、意気投合したのが創業のきっかけです。当初は菅研究室の一角に中古の机を並べてのスタート。その後は、東大内の産学連携拠点で事業を拡大しています。

数兆円の売り上げを上げる世界のメガファーマと創業間もないベンチャーが対等にパートナーシップを組むのは、異例中の異例。これは、同社の持つ独自技術と強固な知的財産をもとに組まれたビジネスモデルによって実現しています。

窪田社長によると、創業時に1年近くかけて、技術の開発と実用化へのステップ、知財戦略と収益モデルなどの事業計画を綿密に練り上げ、寸分違わず実行しているとのこと。IT・サービス系ベンチャーで一般的な、商品をいち早く市場投入し、顧客や競合の動きを判断してビジネスモデルを修正するリーンスタートアップ方式とは全く異なる、技術開発型ベンチャーの創業スタイルと言えます。

ペプチドリームでは、研究者が「経営のプロ」に事業化を任せた点に、大きな特徴があります。研究成果の実用化が十分に進んでいないのが、日本の大学の共通課題。研究者が思い切って、研究成果と市場を繋げるプロセスを、事業立ち上げ経験のあるビジネスマンに任せることは、課題解決の有効な方策です。その意味で、大学発ベンチャーの模範となる成功事例と言えます。

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