さよならスタンフォード、ただいま日本《若手記者・スタンフォード留学記 40・最終回》
スタンフォードは基本的に民主党寄りの学校なのですが、フーバー研究所という共和党寄りのシンクタンクも学内にあるので、左右両方からの意見を聞くチャンスに恵まれました。
たとえば学期の授業で、「9・11をなぜ防げなかったのか」というテーマが取り上げられたのですが、CIAなど情報機関の問題点についてたんまり読書させられた後、実際に、9・11後のインテリジェンス改革を主導したトーマス・フィンガーNIC元会長(NICは国家情報会議の略で、大統領のために外国情勢などの予測を行う機関)がフーバー研究所からやってきて、授業で話をしてくれたりするわけです。第21回でも書きましたが、そうした官民交流のダイナミズムはやはりすばらしい。
とりわけ、軍事、外交、経済分野での人材の充実度がすごい。
日本は、自然科学では、世界でトップクラスの人間が数多くいますが、社会科学はあまり強くありません(もちろん、社会科学はより土着性が高く、アメリカが世界の覇権を握っているという事情はありますが)。
次回もしアメリカの大学に来られる機会があれば、ぜひ研究員として、(学生のように宿題に追われない)自由な立場で勉強してみたいものです。
思いがけず、私がはまった学問
第3の教訓は、国際政治学(国際関係学)と地域研究はすごく面白い、ということです。
私は、留学当初はマクロ経済学を中心に学ぼうと思っていたのですが、必修で履修を余儀なくされた国際関係の授業があまりに面白く、それ以来、国際関係と日本と中国を中心とする東アジアの地域研究に完全にはまってしまいました(そのせいで連載後半にその話題が増えてしまいました……)。
この学問は、政治、経済、文化、歴史などあらゆる学問分野に関係し、その点が、興味が散漫でテーマを1つに絞ることが苦手な私の性格にピッタリ合いました。
アメリカ人一般は、外国に興味がなく、内向きな人が多いですが、国際政治や地域研究の専門家となると当然のことながら相当レベルの高い研究をしています。
中国研究ひとつとっても、玉石混淆ではありますが、日本での中国研究より多様性がありますし、分析も深く、面白く感じました。中国研究において、日本は「地理的に近い」、「文化的に似た面がある」、「語学が習得しやすい」など、アメリカより有利な点がたくさんあるのですが、地の利を十分に生かせているとは思えません。