日本人「怪物」アスリートが生まれにくい背景

アルゼンチン流の指導を体感した飯沼直樹氏

アルゼンチンでの経験から日本での指導に疑問を持つようになったと話した飯沼氏(写真:CAラヌース提供)

「コーチや指導者は厳しくあれ、偉くなければいけない、という空気感をまず感じたんです。

それに縛りや決まりごとが多すぎると。練習メニュー1つ決めるにも上司や上層部の確認が必要だったりします。これらの習慣は本当に必要なのか、本当に効率が良いのか、とも思います」

この辺りは会社文化がスポーツにも適応されているゆえんだろう。指導者がそういう認識であれば、子どもたちもルールに縛られ、豊かなアイデアや自由な発想が持てなくなる。

もちろん決まりごとも大切だが、怪物のような選手を育てるという定義でいうと、逆行しているともいえる。

ジュニアチームにたくさんの指導者がかかわっている

アルゼンチンの1部クラブの場合、ジュニアチームのスタッフだけで30人を超えることも珍しくない。実際に飯沼のいたCAラヌースには、43人もの指導者が在籍していた。各カテゴリーのチーム数の多さにも関係するが、これはJリーグの10倍近い数字ともいえる。

なぜ、アルゼンチンではこれだけの数の指導者がいるのか?

1つは、選手が最も伸びると言われるジュニア世代に、できるだけ密な指導をするためだ。その姿勢が将来の子どもたちの可能性を広げているともいえる。飯沼は言う。

「アルゼンチンでは補欠という概念がありません。そこが日本とは大きく異なります。試合に出なければ選手は上手くならない。それなら、チーム数を増やそうというシンプルな発想ですね。当然ですが、選手によって課題や伸び代は違うわけで、個々を細かくカバーすることは非常に大切です」

飯沼が見ていたU-13世代だけでも4チームあり、それが少しでも上のレベルを目指そうという子どもたちの競争にもつながっていたという。

クラブチームや部活に限らず、日本では”平均を基準にしてメニューや指導方法を考える“という認識を持つ指導者は多い。その理由を尋ねると、「全員が楽しく、幸せのための選択」という意見を耳にしたことがある。一方で、この考えは素養を持つ子の可能性を狭めているという見方もできる。

アルゼンチンでのコーチたちが保護者や選手に対して、ときとして毅然とした態度で接していたことが、飯沼は強く印象に残っているという。

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